Reports

HOME > 会員レポート > 連載 > 浪越徳治郎先生の指圧(2)

連載

浪越徳治郎先生の指圧(2)

2010/9/9 22期 平島利文 4期 石原博司先生監修

「指で圧する手技」の代表格である“母指圧迫法”は、あん摩やマッサージに分類される圧迫法の中の一手技で、主に、施術者が自身の体重を母指に移動させることによって生じる直接的な作用(作用圧)により加圧することを特徴としています。「徳治郎先生の指圧」は、自支を必須とする加圧動作によって生じる間接的な反作用(抗重力圧)により加圧することを特徴としています。このように、“母指圧迫法”と「徳治郎先生の指圧」の加圧法は著しく異なります。しかし、加圧姿勢が酷似しているため、専門家の混同も少なくないようです。

“母指圧迫法”と「徳治郎先生の指圧」をどのようにして識別するか。それには、まず双方の特徴的な違いである作用圧と抗重力圧に対する認識が必要です。同じ施術開始姿勢からの“母指圧迫法”による作用圧やその特徴について、さらに「徳治郎先生の指圧」の抗重力圧やその特徴について概説します。被術者を伏臥位にし、施術者は被術者の左肩甲下部の1点目を重ね母指で加圧する基本姿勢を取ってください。この時、施術者は、あえて加圧点から母指が離れず、基本姿勢を崩さずに加圧ができる最も遠い位置に右膝をつきます。同じ施術開始姿勢からゆっくりと施術することで、双方が持つ加圧法の特徴が明確になります。

“母指圧迫法”では、加圧点に接した母指に体重を移動させるため、施術開始姿勢からすぐに加圧が生じます。この圧が、施術者が自身の重心を母指に移動させて生じさせた作用圧であることを認識してください。この時、加圧力(作用圧)は体重の移動に比例して増加しますので、施術者が任意に加圧力を調整することが可能です。しかし、圧方向は体重の移動に伴い「突き上げ方向」から「垂直方向」、さらに極端な甘手指の場合は「突き下げ方向」へと変化します。また、極端な苦手指の場合は「突き上げ方向」に留まることもあります。そのため、強い圧を突き上げ方向に入れることはまだ可能ですが、弱い圧を垂直方向に入れることは困難となります。即ち、“母指圧迫法”では、加圧力と圧方向に一定の関わりがあり、“任意の圧を任意の方向に入れる”ことは原則的には不可能です。しかし、これを可能とする“母指圧迫法”の名人はいます。それは巧みな手指操作によるもので、“母指圧迫法”の加圧動作ではなく、各名人の個人的な技芸に由来するものです。

会員レポート募集!

同窓会HP委員会では、随時会員レポートを募集しております。卒業して開業・勤務されている方の現状、地域イベントの参加・各期のクラス会など、内容はフリーです。

詳しくはこちら

HOME > 会員レポート > 連載 > 浪越徳治郎先生の指圧(2)
Scroll Up