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指圧理論についての一考察(1)
指圧理論の中核をなす指圧の三原則について検証してみたい。
指圧の三原則とは
- 垂直圧の原則
- 持続の原則
- 集中の原則
のことである。
指圧の特長を表現するという観点からみると、
- 垂直圧の原則とは、『指圧面に対して垂直に押すこと。』ではなく『指圧点を通じ垂直に圧が入ること』となる。受け方の姿勢、部位によってもそれぞれ指圧点を通じ垂直に圧が入ること。従って、同じ肩甲下部でも伏臥位と横臥位では圧の入り方が変わる。(詳しくは後述)垂直圧は、圧し方にも受け方にも効率の良い圧である。
- 持続の原則とは、一定時間以上圧が持続するということ。垂直圧が入る為には持続が不可欠である。従って垂直圧と持続は一体としてとらえるべきで、ことさら別ける必要はない。
- 集中の原則とは、精神を集中するということで何事にも精神集中は大切なことで、指圧だけの特長として入れる必要はない。結論として、指圧の原則とは垂直圧の原則だけで良い。指圧を説明する言葉としては、これで充分である。
次に垂直圧の方法論について述べる。腕を垂直にして圧すから垂直圧ではない。また垂直に圧を入れようと押すのもだめである。なぜなら力押しになるからである。結果として垂直に圧が入ることが重要である。指圧の圧は本来、力押しではなく、重心を移動することで圧が入る。
そういう圧がより効果の出せる圧である。それには圧す時の姿勢を覚えることである。力がぬけて圧せる姿勢がある。その姿勢がとれれば重心を移動させるだけで圧が入る。力はいらない。
伏臥位の肩甲下部の圧し方から説明する。この圧しかたで全身を圧せれば全て垂直圧となる。
そのまえに昭和30年に、法律217号の内、医業類似行為の調査研究を全国特定大学に委嘱された際、手による療術の調査研究を分担された東京医大名誉教授、藤井尚久先生の著書『指圧の理論と術技の大要』昭和31年発行より
押圧の三原則
- 垂直圧の原則
理学上垂直に圧力を加えると圧力に無駄がなく、力強く加わる。(まっすぐに押すこと)また、人の身体は種々の曲線を形成している。これらに刺激を与えるには、常に垂直圧をもって行うと一番力に無駄がない。 - 持久の原則
永く刺激を与える時(刺激の与え方を工夫すること)また、ある程度押圧したならば、その力をゆるめずして、そのままに一定の時間止めておき、それから離すやり方で、この間に指の感覚なり、受術者の感じなりを念頭において、刺激を適当にしてゆく意味のものである。 - 集中の原則
術者の精神集中はもちろん、受術者とも互いに意気相通ぜしめる。(触れてから押して離すまでの間、全精神を集中すること)また、術者自身が精神を集中してかかることは最も必要なことであるが、また術者と受術者との気持ちを一致せしめようとするものである。指圧では形ばかりの押圧や、職業的、事務的な押圧ということをたいへん嫌うもので、一回の押圧であっても常に有効適切であるようにつとめる
この押圧の三原則が元となり定説となっている。垂直圧の原則:まっすぐに押すこと。正しい日本語であるが、いろんな意味にもとれて中途半端である。その為に『指圧面に対して垂直に押すこと。』としたのであろう。これでは同じ肩甲下部が,伏臥位と横臥位で区別がつかない。というより同じ方向に圧が入ることになる。それでは伏臥位、横臥位で指圧する意味が希薄となる。
改めて,伏臥位肩甲下部の圧し方から説明する。
1.の腰の動き始め(右大腿部が右母指に近づく動き)に右母指が沈む。(この状態になってからの腰の動きで垂直圧となる。)あとは 2. 3.と更に腰の動き,4.で右大腿部が垂直になる辺りで腰の動きは止まる。注)右肘が少し曲がっているのは、当りをやわらかくする為です。 これで垂直圧になります(床面に対して垂直圧となる。)
『写真の説明 左上1.右上2.左下3.右下4.』
次に肩甲間部の圧し方
1. 肩甲下部と同様、腰の動き始め(右大腿部が右手母指に近づく動き)で右母指を沈める。これからの腰の動きで全て垂直圧となる。2. 3.と更に腰の動き、4.右大腿部がほぼ垂直の処で止まる。
『写真の説明 左上1.右上2.左下3.右下4.』
つづく