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総会

平成30年度 通常総会・懇親会記念講演 近藤宏先生

  • 2019.04.29
  • 2024.10.02

平成30年6月10日(日)
ホテルメトロポリタンエドモンド 3階

○司会 それでは、定刻になりました。ただいまより、国立大学法人筑波技術大学保健科学部保健学科講師、近藤宏先生に、「指圧師の臨床に役立つ スポーツ分野におけるあん摩マッサージ指圧に関するエビデンス」と題しまして講演を行っていただきます。それでは近藤先生、よろしくお願いいたします。

○近藤宏氏 皆様初めまして。筑波技術大学保健科学部保健学科、鍼灸学専攻の近藤でございます。今日は、このような同窓会の特別講演にお呼びいただきまして、誠にありがとうございます。

私、今日お話させていただきますのは、今御紹介いただいたとおりといったところでございますが、最初に、あん摩マッサージ指圧業界の状況について、大学の方で調査を行っておるものですから、そういったところの調査研究の結果を少し触れさせていただきながら、今日の演題であります、スポーツ分野におけるあん摩マッサージ指圧に関するエビデンスのお話をさせていただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。気軽に聞いていただければと思っております。

ところで、先生方はこのあん摩マッサージ指圧に関する最新の情報って、どういうふうに入手されていますでしょうか。それぞれの先生が、例えば、今はインターネットなんかかなり普及していまして、いろいろな情報が飛び交っておりますので、そういったところでいろいろと情報を入手される方もいらっしゃれば、学術大会、学会等に所属されて、そちらから情報を入手される方もいらっしゃれば、あとは業団等に入られて、そちらの方から最新の情報を入手される方もいるかと思います。特に、この同窓会なども一つの情報入手する、一つのツールといったものになるかなというふうに思っております。ホームページ見させていただきましたら、かなり、他の同窓会と比べれば、しっかりされていて、活動も充実されているのが、よく分かりました。大変、頭が下がる思いです。

実は、筑波技術大学は、同窓会がございません。もう既に30年ほど経ちそうなんですけれども、最初の立ち上げが、どうもうまくいかなくて、正式な形での同窓会はなく、一昨年、同窓会を立ち上げるべく、何名かの卒業生、1期生にお願いして、ようやく同窓会らしいセレモニー等やれるような準備が進んでいるというような形です。もうこちらの同窓会、かなり歴史があるようですので、非常にうらやましい限りといったところです。

こういったツールを使っている方が多いかなと思いますが、スポーツの話を、少しさせていただきますと、スポーツの分野というのは、今、様々な職種が関わりながら、選手をサポートするような考えが定着をしております。選手を取り巻く状況としましては、当然、指導者ですとか、コーチ、監督もいますが、それにトレーナーといったようなものから、競技によってですけれども、道具を扱うようなものであれば、競技関連のスタッフも関係してきますし、また、医療に関わるところでは、医師を中心としたところで、理学療法士も含めて関与してきます。我々も、あん摩マッサージ、また鍼灸師も、この中のスポーツ選手を支援する体制の中の重要な一つになっているといったところだと思います。いろいろ、こういった職種が関わってくるということは、そういう意味では、我々がやっているような仕事というもの、またあん摩マッサージ指圧がどういうものなのかというのを、周りの職種の方に理解してもらわなきゃいけないというのがあると思います。

マッサージ自体は、指圧もそうですし、あん摩もそうですけれども、どういったものかというのは、大体イメージは皆さんされると思うのです。果たしてそれが選手の方に対して、どういう効果をもたらすのか。

もう一つ、最近は安全性の問題があります。施術して大丈夫なのかというところの方まで、担保されているかどうかを、周りの関連職種の方々に理解していただかないといけない、そういう時代になっていると。

そういったところから考えますと、最新の情報ですね、あん摩マッサージ指圧に関する情報っていうのって、常に入手して、そのトレンドと言いますか、そういったものをちゃんと持っておかなければ、対応できない形になっています。安全性ですとか、有効性といったようなものを、科学的な根拠に基づいて説明をできなきゃいけないような時代になっているというのは、覚えておかなきゃいけないといったところになってきます。

それから、最新の情報っていうのは、どうなのかといったところで、アンケート調査をしております。2014年に全国の施術所2万客体を対象に、アンケート調査しました。最終的には1500件ぐらいの回答率といったところだったのですけれども、この学術団体、いわゆる学会に入っていますかという問いでは、大体4割ぐらいの方が入っていますよ、というふうに回答しております。印象としては、我々のように大学に所属していますと、もう少し入っていてほしいなというような気持ちになってしまうところではあるのです。もう一つ見ているのが、業団への加入状況ですね。こちらの方は7割ほどになっております。無作為に抽出したところで、2万件送っていますので、おおむね大体このぐらいの数字がどのアンケート調査でも出てくるかなというふうに思っております。7割ぐらいの方が入っていて、先ほどの学会、また業団と合わせて、情報をこういったところから先生方は入手しているのかな、7割ぐらいの方はそういったところに入っているのかなというのが、分かっているというような形になります。

実は、このアンケート調査ですね、いろいろと聞いておりまして、もしかすると先生方、開業をされていると、そちらの方にアンケート調査がいったのではないかなというふう思われます。その節はお世話になりました。アンケートでは、実は年収も聞いておりまして、ちょっと今日御紹介をさせていただきたいと思っております。年収ですので、全体の収益、売上といったところが1年間でどうだったかというようなものです。これを見ていただきますと、全体では平均値で571万円というような形です。中央値、大体この年収見るとき、実際には中央値を見ることが多いのですけれども、中央値を見ますと350万円ということで、ちょっと低いかなというようなイメージを持っておりました。

視覚障害の方と、この業界は特に、特徴的なところですけれども、視覚障害の方、そして晴眼者の方、分けて少し見てみました。そうしますと、視覚障害をお持ちの方の年収っていうのは、晴眼の方と比べると、かなり差があるというのが分かっております。晴眼の方ですと、636万円。中央値で400万円ですけれど、視覚障害の方ですと290万円、中央値180万円と、かなり開きがあるというのが分かっております。

いずれにせよ、この業界は、大体年収が400万円あたりのところが、中央値だというのが分かった。

この400万円って一体どのぐらいの数字かと言いますと、日本のサラリーマンの平均が、大体414万円ぐらいだというふうに言われております。そう考えますと、平均的なサラリーマンの平均と中央値と比べても、おおむね平均的な年収というようなことが言えるのではないかなといったところになっていきます。

でも、見ていただきますと分かるんですけれども、最大ですと3000万円というような方も、いらっしゃいます。かなり幅があるんですね。標準偏差を見てみますと、1181万円、これは晴眼の方です。全体でも1100万円ぐらい差がありますので、年収が高い方もいれば、低い方もいるというような形のことが言えるかと思います。

ちょっとその分布を見てみますと、晴眼の方のところの方がいいですね。見ていきますと、双極性の状態は、1000万円以上の方がグンと多くて、その後ピラミッド型のような形で増えていくというようなところですね。一方、視覚障害の方の場合は、どちらかというと、ピラミッド型をなしているというような形になっています。そういったところで、もう一つ年収の満足度も聞いております。この年収に対して、あなた自身が満足度はどうですかという質問です。さすがに低いという方が30%ぐらい。大いに満足している、まあ満足している、合わせますと、大体3割ぐらいの方が、御自身の年収に対して満足をしているというような形になっていきます。

ただ、不満ばかりではなくて、実際には仕事のやりがいはどうかも聞いています。そうしますと、これはすごいですね。9割以上の方が、この仕事に対して、やりがいを大いに感じている、まあ感じている。要するに肯定的な形で、仕事に対するやりがいは、非常に高い職種だと言えます。恐らく、他の職種と比べても、これだけ高いのは我々、特に、この業界ならではないかと思われます。治療をする職種の特徴かな、というふうに思っております。

もう一つ見ていきますと、これは日頃の営業努力と年収の関係を表しております。2017年以前に行ったアンケートでは、努力した方が報われているかどうかというのは、チェックをしませんでした。年収が低かったものですから、では実際はどうなのかという形で、何かあるだろうというふうに見てみました。やはり、営業努力をされている方は、それなりに年収がだんだん高くなる。そういった努力をしなければ、やはり低いまま、努力で報われるというような形ですので、そういったところではやる気になれば、年収も増えていきますし、そうでなければ、それなりの年収だといったところになります。そういう意味で、自分自身がどういうようなポジションで、どういうような考えを持ってやっていくかっていうのは、いろいろな選択ができるというようなこと、やりがいが高い業界だっていうのが、分かったといったところになります。

もう一つすみません。先生方に、業務発展に必要だと思うこと、どんなことがありますかっていうふうに聞きました。全体の業界についてですね、取らせていただきました。そうしますと、一番多かったのは、昨今いろいろと問題になっておりまして、無資格者の問題ですね。無資格者、無免許の取り締まりを強化してほしいというのが、晴眼者、視覚障害者と合わせて、一番高かったというような形になっております。かなりこういったところは、業界としましても、極めて遺憾でありますし、今後いろいろな取組をもって、対応していかなければならないような状況だと。これは、業団の方の先生方とお話すると、必ず出てくるお話かというふうに思っておりますので、いろいろと問題あるかと思います。さまざまな形で取り組んでいければというふうに思っておりますが、実は、ちょっと宣伝なのですけど、私の関与しております明治の鍼灸大学、今は明治医療大学になっていますけれども、その矢野忠先生、また東京有明大の坂井友実先生、技術大学の藤井亮輔先生と共に、今、あん摩マッサージ指圧コンテストを企画しております。実は業界初の試みでして、今まであってもよかったのになと思うのですけれども、調べてみて、初めてでして、そういったものを一枝のゆめ財団といったところで主催をしております。おかげさまで、この鍼灸マッサージの業団の方々にも、御後援、また協賛をいただいて、7月28日に東京の竹橋にあります、毎日新聞本社があるのですけれど、そちらの方にイベントホールがありまして、そちらの方で開催するような運びとなりました。今、実は出場者、選手を募集しております。もうすぐ満タンになりそうなんですけれども、もし御興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひ出場いただければというふうに思っていますし、当日は、一般参加の方に、実際にマッサージを受けていただいて、審査にも加わっていただくようなイベント性の高いものになっておりますので、ぜひ御興味がある先生方、行っていただければというふうに思っていますので、よろしくお願いいたします。ちょっと宣伝でした。

さて、今日の一番のメインのお話をさせていただきたいというふうに思っております。2020年、御承知のとおり、東京オリピック、パラリンピックが、この東京で行われます。いろいろと準備が、だんだん進んでいるところでございます。

実は、我々のマッサージの業界も、非常に注目をしているといったところ。先生方も、もしかするとお聞きに、既になっているのかもしれませんが、東京オリンピック、パラリンピックは、4年に一度、どこかの国でやられるんですけれども、必ず医療サービスというのが提供されます。どういったものがあるかというと、選手村ですとか、各競技会場にですね、ポリクリニックという、言ってみれば総合診療所があります。そこにはMRIがあったりですとか、検査器具があったりだとか、はたまた医者と共に看護師をはじめ、医療技術者が集まって、一時的な処置をする場所がございます。そういった中で、理学療法のサービスが行われております。組織委員会が、このポリクリニックですとか、そういったスタッフを準備するというような形になっていまして、そのスタッフそのものは、全部ボランティアだそうです。一切お金は払わないぞという形の中で、募集を募るというような形になっています。

日本でも、これから、ボランティアを募るような形になっております。一般の通常の方も含めて、今回、8万人ぐらいの方をボランティアとして募る。その中に、このポリクリニック内で行われる理療サービスにおいても、ボランティアを募る。医療関係者の募集をするという形になっています。その理学療法のサービスの中に、実は、マッサージというのがオリンピック、パラリンピックで必ず付いてきています。ちなみに鍼も、前回のオリンピック、パラリンピックでもそうでしたが、必ずサービスの中に含まれています。

通常海外ですと、このマッサージですとか、鍼もそうですけれども、そういったものは、理学療法士が行うようなことがほとんどになっております。医療サービスの中で、医師の指示の下、理学療法士がマッサージをしたりだとか、鍼をしたりだとかという形が通常行われているといったところです。

では日本はどうか。日本は、法律があるんですね。あん摩マッサージ、鍼灸に関する法律ということで、マッサージについては、あん摩マッサージ指圧師がやること。それで、鍼灸については、鍼灸師が行うことというふうになっていますので、恐らく、日本でこの理学療法サービスの中のマッサージには、必ず、あん摩マッサージ指圧師が活躍するという形になるというふうに考えております。

これから、7月、8月あたりに、ボランティアの募集が始まるかと思います。注目していただければなというふうに思います。報道になっていますので、いろいろ条件がどうもあるようです。何か外国語を喋れなければいけないとか、経験は何年以上とかね。スポーツ選手を常に見ているとかですね、いろいろ条件があるようなんですけれども、もしそういった条件が要綱を見てクリアできる方は、ぜひ登録いただければなと思います。日本のマッサージのすごさを、ぜひオリンピック選手に体験していただきたいなというふうに思っていますので、そういったところ、注目いただければと思います。

いずれにせよ、このスポーツ選手を取り巻く支援体制といったところでは、もう今も話したように、多様な職種の方が関わってやっていくっていうのは分かっているわけです。そういった中で、特に、今日、鍼、あん摩マッサージ指圧といったところが、どういうような有効性があって、どういうような安全性が担保されているかっていうのは、分かっていなければいけないというような形になっていきます。

今日はそういったところも、スポーツ分野における鍼灸の有効性、安全性について、少し見ていきたいと思います。

実は、昨年、スポーツ分野における鍼灸マッサージに関するエビデンスレポートという冊子を作りました。おかげ様で、今2版目に突入しているようなところで、いろんなところで配布もさせていただいていて、今日お持ちしようと思っていたら、80人と聞いて、ちょっと持って行くのがつらいなと思いまして、1冊が結構厚みがあって、100ページぐらいあるものですから、皆さんお持ち帰りするのは大変だなと思いまして、ちょっと割愛させていただきましたが、これまでのスポーツ分野における、鍼、灸、マッサージに関する研究論文を、日本問わず、海外のものも集めていて、どういうような研究が行われて、どういうような科学的な裏付けがあるかというのをレビューした内容のものになっています。これさえ見れば、この2015年ぐらいまでのものですけれども、どういうような科学的な根拠に基づいて、あん摩マッサージ指圧のエビデンスがあるかっていうのが分かります。今日持ってくるのが大変だったんですけれども、実際は今、インターネットで見られるようになっております。こういった取組が認められまして、実は厚労省の中にあります統合医療情報発信サイト、eJIMって略すそうですけれども、このeJIMで検索していただきますと、最初に必ず出てきますから、そこからページに入っていただくといいかなと思います。この情報発信サイト、非常に役に立ちますので、またちょっと後から御紹介をさせていただきますが、その統合医療エビデンスというふうに書かれたところに、中段右側に、スポーツ鍼灸マッサージというようなカテゴリがある。そこをクリックいただきますと、先ほどのエビデンスレポートが、全て集約をされているという形ですね。ぜひ、今日も、もしお時間ありましたら、懇親会の時、クリックしていただければなというふうに思います。

お忙しい先生方ですから、それよりも先に今日聞いていただければ、中に大体何が書いてあるかがパッと御紹介できるという形にはなっております。

まず、そのマッサージの有効性についてのお話をさせていただきます。19分の10というふうに書いてありますが、我々は、これをやるに当たって、後からまた出てくるんですけれども、かなり多くの論文から、より優れた論文のみを抽出して、質の高いものだけを抽出して、その中に何が書いてあるかを、一つずつ調べてみました。そうしましたら、マッサージに関する文献は19件。ですから少ないわけですよね。僕も少ないなというふうに思いました。論文はたくさんあるんです。たくさんあるんですけれど、いわゆる正しい情報がちゃんと書いてあるようなものだけを抽出したら19件でした。そのうち、マッサージは効果があるよというふうに書いてあったのが10件だったということです。もう少し詳しく見ていきますと、有効性については、効果ありであったのが10件で、一部効果があったのが2件。効果がないというのは4件、どちらとも判断できないのが3件というような形でした。

先ほどのエビデンスレポートのお話をさせていただきますと、最初に鍼灸マッサージに関するスポーツ分野だけですけれども、文献をタイトルだけチョイスをしました。5000件ぐらいピックアップされていきました。その中から、先ほど言ったような形で抽出したら65件という数字になりました。どういうふうに選んだかという話をざっくりとしますと、日本の論文につきましては、医学中央雑誌のWEB版がありまして、そちらの方をデータベースに活用していますし、もう一つは、MEDLINEという特に英語中心ですけれども、英語の論文の集約されているような検索データベースがありますが、そちらの方を活用しているといったところになります。研究デザインとしましては、ランダム化比較試験という、いわゆるRCTと言われるような試験があります。やったらよかったというだけではなくて、比較したらよかったというような形で、ある程度エビデンスレベルの質が高いものを抽出しております。そういったもののみを抽出したら、この件数だったというふうに思っていただければなと思います。スポーツ選手ですとか、その症状がスポーツに起因するようなものを研究論文の選択基準という形にいたしました。

スポーツに関する検索につきましては、ただスポーツというだけではなくて、ありとあらゆるスポーツの競技を、検索語に使って、ないし、マッサージにつきましても、あん摩マッサージ指圧というキーワードだけではなくて、もみりょうじというようなものから、押圧も含めて、想像できるようなものは全て入れているというような形で、大体網羅的に検索されているのかなというふうに思っております。

関係ないものを割愛したという形になります。全然関係ないものもたくさんあるんですね。例えば散髪屋さんがやるマッサージですよね。マッサージと言わないんですけれども、そういったものですとか、看護師がやるケアですね。そういったものは全て排除しているというような形で、関連するものの一個一個論文を読み、それを抽出したというような形のものです。5000件だったものが、今のようなスクリーニングを行いまして、最終的には65件というような形になります。マッサージについては19件という形になっております。

スポーツ分野における、マッサージの有効性ということで、その19件の文献にはどういったものが書かれているか。一個一個読んでいると時間がございませんので、概要のみ御説明の方をさせていただきますと、おおむね二つに分けることができます。一つは運動後に対して、どのような効果があるのか。もう一つは、運動前にマッサージをすると、何か効果があるのかというような、この二つに分けることができます。ただ、先に言っておきますと、運動後のマッサージっていうのは非常に効果的だというふうに書いてあります。運動前のマッサージは、効果は限定的だというような形が分かっております。どんなものに効果があるか見ますと、アンダーソンさんが行った2013年の論文に書いてあるんですけれども、自発性筋痛、いわゆる筋肉痛に対して、その筋痛を緩和するというようなことが、報告されています。また、疲労感。疲労感というのはポイントでして、時間的な疲労感ですね。そういったものが、マッサージによって回復を促進するというようなことが書かれています。あともう一つは、激しい運動直後の筋力低下の回復過程において、マッサージを行うことによって、早期にこの筋力というのが回復するんだというふうに書いてあります。これは、2003年の論文です。

ただ、一方、ネガティブな研究もあるんです。運動前のマッサージの影響のところでは、運動前にかなり強めのマッサージというふうに書いてありますが、最大筋枝力の減少、いわゆるピークトルクと言われるような、最大に力をぐんっと上げたときの、この力が、マッサージをしたグループでは、何もしなかったグループと比べて低下するのが分かっております。

そのほか、総合パフォーマンスに好影響なしというふうに書いてありますが、これ3000mのシャトルラン行うんですけれども、その前にいろんな組み合わせをします。マッサージだけを行うグループと、マッサージとウォーミングアップを行うようなグループと、ウォーミングアップだけを行うグループでやったところ、マッサージを介入したということがあったとしても、ウォーミングアップした者と何ら変わりはなかったというような形のことが書かれております。何が変わりがなかったかというと、記録ですね。そういったものについては、余り差がなかったというようなことです。

ただ、スポーツ選手を見ていきますと、運動前にマッサージをやってないかというと、実際にはやっているんですね。やりながら、その後ウォーミングアップをやっているという形で、積極的にマッサージがというわけではなくて、ウォーミングアップの中の一つとして、このマッサージは使われています。何でやるかといったところですけれども、これは選手の中にはかなり緊張する方、ストレス、プレッシャーを感じる方がいらっしゃいます。そういったところを、マッサージでケアすることによって、その緊張感というのをほぐすというようなところでやっているという。こういった、実はこれも、論文に書かれている内容なんです。そういったようなプレッシャーを感じるような選手においては、運動前のマッサージは有効だというふうに書かれた論文もございます。その運動前のマッサージというのは、影響がない、または瞬発力が下がるというような場合もあるんですけれども、精神的な側面からすれば、マッサージの効果は運動前非常に高いっていうようなことが言えるかなというふうに思っております。そのような形で活用されるといいかなと思います。

ちょっとまとめますと、マッサージの介入によって、何らかの効果がある論文というのは63%ぐらいという形でございました。どのようなものに効果があるかっていうと、筋疲労ですとか、痛みに対しての効果といったところでございます。介入方法としましては、マッサージが15件、指圧が1件、あん摩が1件という形で、指圧とあん摩については、それぞれ日本の論文のものになります。

せっかく指圧学校の同窓会ですので、その1件を少しお話しますと、これは大阪の体育大の研究グループが行った研究なんですけれども、アキレス腱のところに、押圧刺激をして、その後に血流が上がるかどうかというのを見た研究になっております。あと、筋力を見てみるというものになっていますが、それを見ていきますと、アキレス腱に圧迫をしているにもかかわらず、他の筋の血流がわーと上がると。上がったと同時に、そこで筋力も筋出力も上がるというような報告になっています。そういったようなものも論文としてはあるといったところであります。

先ほども言いましたけれども、運動後の介入は効果が高いっていうようなことが分かりますし、運動前の介入については、効果が限定的だ。特に精神面については、どうも効果がありそうだというようなところまでは分かっているといったところでございます。

こういった科学的な根拠に基づいて、スポーツ現場のあん摩マッサージ指圧師がスポーツの関係職種の方々に、説明をするというようなことが大切になってきますし、そういうような現場に行きますと必ず聞かれます。特に医師、PTは、最近そういうことで、そういうのは好きな職種ではあるんですけれど、必ず問われますので、いいよ、いいよって言うだけじゃなくて、何がいいの、どういうふうにいいの、やっても大丈夫なのっていうようなことを必ず聞かれますので、そういったところで、やっても大丈夫なんですと言うだけではなく、こういったエビデンスのある研究等のお話をちょっとするだけで、かなり印象が変わりますので、ぜひそういった形で付け加えていただきたいです。

残念ながら、まだまだ数としては非常に少ない。質のよいものだけ抽出しますと、先ほど言ったように19件ぐらいということですので、今後は我々の大学も含めて、また現場の先生方も含めて、一緒に質の高い臨床研究を増やしていかないと、対応していけないというような形になっていますので、ぜひ一緒に協力しながら進めていければなというふうに思っていますので、御協力よろしくお願いしたいというふうに思います。

さて、少しお話が変わりますけれども、先ほど御紹介させていただきました、統合医療情報発信サイトというサイトの話をさせていただきたいと思います。厚労省が管轄しているもので、厚労省が今、統合医療について語り始めていると、そういう時代になっています。そういった中で、統合医療の中に、鍼灸、あん摩マッサージ、指圧も位置付けをされています。かなりメインストリートを通っているようなところだと。やはり歴史がございますので、メインストリートを突っ走っている状況かと思っていただいていいのかなというふうに思います。ぜひ見ていただければと思いますが、そんな中に、統合医療の状況というので、各種療法の利用状況が書かれています。この統合医療の中には非常に幅広く、サプリメント、健康食品から始まって、マッサージ、整体、アロマテラピー、漢方、ヨガですとか、カイロプラクティック、はたまた心理テラピー、食事療法ですね、気功ですとか、ホメオパシーといったようなものが、全て書かれています。

我々は、このマッサージのところはどのぐらいか。これは何を見ているかというと、利用状況を見ています。これ見ていきますと、利用したことが今までない方というのは、62%ぐらいで、それ以外の方は1回でも大体使ったことがあるというふうになっています。大体4割ぐらいの方は、マッサージを受けたことがあるよと調査では書かれております。

今現在かかっている方になりますと、利用したことがある、現在も利用している方は13%です。鍼灸が大体、これはちょっと限定的ですけれども、大体5~7%ですので、マッサージの方が圧倒的に大きいという形。1回でも利用したことがあるというのは、もう21%だということです。4割ぐらいの方が使ったことがあるという形になります。整体の方も同じぐらいのパーセンテージですので、もう少し我々も業界としては頑張っていかなければならないかなというふうに思います。そのぐらいの認識であるというのは、御理解いただきたいなと思います。

そちらの方にも、この今御紹介しました情報発信サイトの中に、マッサージ療法の効果、エビデンスというのがまた書かれています。これまた、スポーツとは全然、別個です。マッサージはどうなのという話になります。その中のものを少し紹介させていただきたいというふうに思います。マッサージ療法に関する多くの科学研究という、ちょっと矛盾点も多いというので、レベルもまちまちで、かつ質について、また、その結果についても、全て同じような方向性ではないというような形になります。ただし、言えることは、痛みに対するもの、また様々な病気に対して、効果があると言われております。ただ、その効果は、短期的、限定的なその効果であると書いてあります。ですので大切なのは、その下のところなんですけれども、効果を得るにはマッサージを受け続ける必要があるということで、リピートをしていただく必要性があるよというようなこと、そういったことがもう既に書かれています。そういうことでは、患者さんに対して、もうマッサージはこういうもんだというふうな形で、御理解いただくような形になります。その中には、じゃあどういったものに効果があるかと、幾つかこのサイトでも紹介されていますので、少し御紹介をさせていただこうかなと思います。

変形性の関節症についても効果があるということ。ただ、可能性があるって必ず付いているんですね。ですので、ちょっとかなり強いインパクトのある形ではないんですが、痛みに対して効果があるよというふうに言われております。

そのほか、労働作業を行うような女性にとって、マッサージというのは、痛みを徐々に緩和して、満足感を増すというふうに言われております。ただ、先ほどから言うエビデンスレベルというのは低いというふうに、最終的なところでは書かれております。これは仕方がない話で、他の研究、お薬なんか特にそうなんですけれども、いわゆるマスキングといって、ブラインドの研究ができるんですね。片一方はいってみれば食塩水のようなものを注射して、片一方のものは、ちゃんとした薬が入っている。お薬なんかはそうです。片一方は小麦粉を固めたもの、片一方はちゃんと効薬があるものをやって、どちらか飲ませて、その違いを見るというようなことができるんですけれども、残念ながら、マッサージはマスキングができないですね。触られた時点で分かりますからね。唯一やれるのは動物実験なんですよ。動物実験で麻酔をして、分からなくして、それからやるという方法です。人間では絶対やれませんので、そういう意味では残念ながら我々のこのマッサージは、臨床の研究レベルになりますと、質の話だけをしますと、少しそのエビデンスの研究レベルというのは下がってしまいます。それはもう仕方がない話で、そういうのを分かった上で理解していただくということが大切である。いずれにせよ、この痛みに関しては、我々は得意分野だというのが分かっていただけたらなというふうに思います。

じゃあ疾患ではどうかということなんですけれども、がんに対する研究になります。どうです、皆さん、がんの患者さんとか来られたりしていますかね。いかがでしょうか。我々の大学の診療所に、がんをお持ちの患者さんは来られたりするわけですけれども、ただ言えるのは、がんを何とかしようというふうに思っているわけではなくて、がんに対する副作用に対して、どのようなことができるかというので、いろいろと挑戦をしておったりしますが、そこにも書いてあります。少なくとも短期的には、痛みを緩和すると。かなり痛みが多く出ますので、そういったところを緩和して、かつリラクゼーションを促す効果がある。マッサージをすることによってですね、そのようなリラクゼーション効果が高まって、がんの患者さんにとってはQOLが下がっているところがぐっと上がりますので、そういったところを狙ってやっていくというような形になるかなと思います。

国立がん研究所では、マッサージはやってもいいけれども、慎重にやってくださいというようなことが書かれています。例えば、当然ですけれども、皮膚が損傷しているような部分、打撲しているような部分にはやらないで。また、腫瘍があるような部分についても、直接の圧迫は避けてくださいとか、血管内の血栓症のような部分についても、圧迫は避けるようにですとか、放射線治療をやると、すぐ分かるんですけれども、かなり敏感な部分が出てきますね。そういったものについては、避けてくださいというようなことを言われております。

恐らく、臨床に出られている先生方は、既にそんなことは知っているわいというような形になっているかというふうに思いますので、安心はしているところでありますが、そういった忠告も、こういったサイトには載っております。

もう一つ、メンタルヘルスに関するような研究についても書かれております。2010年に行われた、論文を集めて、レビュー、解析、ネタ分析した研究がありますが、そこのところで、マッサージ療法、抑うつを軽減させるような可能性があるというふうに言われております。ランダム化比較試験を行ったようなところでも、マッサージとヨガをミックスしたような比較研究を行ったところ、抑うつ、不安、また背部、足の痛みの軽減がされたといったところ。生まれてきた子供の体重の増加が見られたというようなことも、少し注釈として書かれていたりしております。そういったところでは、妊婦の方に対して、施術することができるというような話になっていきます。

ただし、妊婦の方、妊娠女性の抑うつを緩和できるかというのは、実はレビューをしてみるとまだ十分な証拠が集まっていないので、一部の研究ではいいよというふうに書かれた論文もあるんですけれども、いろんな論文を集めて分析をすると、結論的には、まだ十分に効果があるというところまではない。患者さんに御説明する場合も、いいというものもあれば、なかなか効果が出ないような場合もあると、臨床研究があるというのはしっかり押さえておいた方がいいかなと思います。

マッサージによる高齢者のリラックス効果はどうかと。これについては、もうレビューが行われておりまして、リラックス効果があると。ここら辺はかなり得意とするジャンルかなという形になっております。

ただ、全般性不安障害、いろいろ障害があるんですけれども、そういった中では、深呼吸をするような呼吸法を、整えるようなもののグループと比較をしたところ、症状の緩和効果は差がなかったというふうに書かれているような論文も出たりしております。そういう意味では、マッサージもいいけれども、もし来られないようでしたら、こういう呼吸法でも効果がありますよというような案内の仕方もできるかなといったところになりますので、こういった合わせ技で、いろいろと患者様に御説明することができるというような話になってきます。

ここまで、スポーツ分野におけるマッサージの有効性についてお話をしました。それ以外の一般的なお話も、今少し御紹介をさせていただいたところではあります。

これからお話をさせていただくのは、スポーツ分野におけるマッサージの安全性についてです。最近はかなりこちらの方を言われることが、スポーツ現場にはあります。今、このタイミングでマッサージをやっていいのというようなところであります。もうそれで先生任せるからっていう形で。経験豊富な先生は、やはりやって失敗したこともたくさんあるんですね。現場の先生からすると。この時やって、ああなっちゃって、ちょっとこれはとんでもないことになったとかですね、絶対こういったペーパーにはなりませんけど、必ずあります。ですので、経験の豊富な先生は、いろいろとよく分かっているんですけれども、言ってみれば我々、これからやろうというような先生方も含めて、形では、押さえておかなきゃいけない一つといったところではあります。実際、この安全性について、安全性っていうのは有害事象、ヒヤリハットですね。そういったものですとか、インシデント、何か起こってしまった事故ですとか、そういったものについて、先ほどの19件中何件書いてあったか。マッサージの安全性に対する記載、1件しかないですね。ほかの論文は、臨床研究をやりました。その間に何か事故がありました。インシデントがありましたというのは一切かかれてない状況で、1件だけ書かれていました。書かれていたとしても、何かあったかというと、有害事象はありませんでしたというような形。1件しかないもんですから、それがないというふうな形で、マッサージをやっても安全か、いや、書かれていませんし、書かれたものも、有害事象が特に起きませんでしたから、大丈夫ですと果たして言えるかどうかですね。なかなか厳しいところではあります。鍼の方を見ていただくと分かるんですけれども、もう少し多いんですね。5件ぐらい書かれているような形。そちらの方では、鍼をやった後に走ってしまったり、途中嘔吐してしまった、立ち眩みがというようなことがあった。特に出血が多いんですけれども、鍼は。マッサージの場合は、こういったところが書かれてないというような形ですので、これからそういう意味では、前向きな研究を我々も取り組んでいかなきゃいけないという形になっております。

実は昨年から、業団の先生方も巻き込んで、鍼灸マッサージに関する、安全性に関する調査というのを、スポーツ現場の先生方、また選手の皆さんに調査を行いました。今年、又は来年以降、また先生方にお目にかかるような形で、コメントされるかと思いますので、ぜひそういったところを見ていただければなというふうに思っております。いずれにせよ、この安全性については、まだまだよく分からないところといったところで、ここのところ突かれても、なかなか研究ベースで報告ができない現状を、御理解いただいた方がよろしいかなというふうに思います。

ただ、スポーツ分野だけじゃなくて、マッサージ全体のことについておおむね分かっているんです。スポーツ選手がどうのこうのというんではなくて、マッサージ全体としてはどうかですね。患者様に対してマッサージはどうかというようなところを、おおむねいろんなところで注意事項等が書かれ、ガイドラインが書かれております。それを、見ていきますと、マッサージ療法の安全性と副作用の科学的根拠ということですけれども、訓練を受けた施術者、我々資格持ちの場合は、リスクはほとんどないというふうに考えられているというように、もう認められているんですね。

しかし、マッサージ、これ療法士って書いてありますが、ある種の健康状態については、注意を払わなければならないということで、我々も多分学校で習ったときから、十分理解しているかなと思いますが、特に、妊娠中の女性については、マッサージをやってはいけないというわけではなくて、注意しなければいけないということですし、妊娠していることを施術者に話す。また我々も、聞かなければならないといったところになります。

そのほかのところ、いわゆる内出血が起こる可能性があるという話になってきますが、出血性疾患、または血小板の数が低下している患者さん。お薬なんかではワーファリンと言われるようなお薬がありますが、どうしてもお薬自体は血圧なんか下げたりだとかっていうような形で、薬としてはいい薬なんですけれども、血管を少しもろくしてしまったりだとかというような副作用、抗凝固薬というようなところで使われていますもんですから、そういうようなものを飲んでいる患者さん、服薬している患者さんについては、強い力、または深部へのマッサージは注意をすべきだというふうになっていますし、皮膚が弱くなっているようなところについてのマッサージについて、注意しなければいけないというような形で書かれております。

あと、先ほど少し出ましたけれども、がんの患者さんの腫瘍、がんの部分については、その医療、患者の医療スタッフが承認しない限りは、深部への圧や強い圧迫は用いてはいけないというような形になります。この辺も、スポーツ現場と一緒なんですね。やっぱり連携しながら、どういうふうにやるかを念頭に置いてやっていただくというのは、非常に大切になってきます。特に、がん患者さんの場合は、必ずどちらかの病院、医療機関にかかっているわけですから、もし定期的に診るようであれば、そういったところの医療機関と連携しながらやっていくのは、これから我々においては大切になっていくところかなというふうに思っております。

残念ながら先ほどもお話をしましたけれども、この安全性につきましては、スポーツ分野では、まだまだ発展途上な状況でございまして、一般的に言われるようなところについては、十分に押さえていただきながら、対応していくということが大切になっていくかなと思っております。

最後、まとめのところになっていくんですけれども、選手に対応していくためには、やはり選手ファーストといった形で、選手のためにあん摩マッサージ指圧師が何ができるのかを、常に考えなければいけないという形になります。我々、あん摩マッサージ指圧師っていうのは、どうしても技術を出してなんぼの世界ですから、いかに我々の技術を提供できるかっていうのを、選手にやっぱり見せたい、やりたいっていうのはあるんですけれども、今度選手ファーストというふうに考えますと、このタイミングでマッサージをするのはよろしくないという場面も、必ずあるんですね。先ほどお話をしました、運動前の選手に対してどういうようなアプローチをするのかといったときに、選手がやってくれと言うんだけれども、今のようなお話をさせていただきますと、ちょっと待てよと。もしかすると、瞬発力については下がってしまうかもしれないな。ほかのものについては影響がないな。緊張しやすい選手だったら、これはいいことあるかもしれないなというような形で、アプローチの方法はかなり変わってくるので、当然選手はそういうのを知りませんので、やれば何とかなるというふうに思っている方も、中にはあるかもしれませんので、そういったところで、待てよ、この場合はマッサージをやらない方がいいなというような形で、もし必要ならば、競技終わった後から施術を受けに来てくださいとか、そういうようなアドバイスでタイミングを提示できるかなと思います。これは選手だけではなく、関係者、スポーツを取り巻く職種、周りの職種の方にもいえるのかなと思います。周りの職種の方々は、マッサージがいいぞと言って、どんどん勧めてくれること多いんですよ。どんどん選手を送ってくれるんですけれども、向こうは到底、全て何かいいことがあるんだと思って送ってきますから、そういったときに、やらない勇気というが大切になってくる場面が、中にはあります。ぜひ、あ、このタイミングではやるという。このタイミングではやらない方がいいっていうのを提示できるレベルでやっていただくというのが、選手ファーストというような視点からすれば、大切になってくるかなというふうに思いますので、ぜひ選手を見る場合については、選手ファーストで覚えていただいて、対応いただくといいかなと思います。

二つ目がインフォームドコンセントと書かせていただきました。先ほどから、科学的な根拠に基づいて説明するような時代になってきたというお話をさせていただきました。まさに、東京のオリンピック、パラリンピックという中では、スポーツの分野、国民全てが注目をしております。恐らく、テレビ、メディアでもそういった場面、マッサージ師が活躍するような場面が出れば、今後ますますマッサージ、このあん摩マッサージ指圧が盛り上がっていく場面が出てくるかと思います。そういったときに、いいよ、いいよ、何でも効くんだよというわけではなく、こういう場面では効果がある。こういう場面では有効な、こういう場面では有用だ。こういうときに用いるんだというようなことを理解いただきながら、効果あるようなところを一生懸命やって、ここはなかなか難しいな。こういう場面ではマッサージ以外のことも考えた方がいいなというようなことを、しっかりと説明をしていただくということが、大切になっていくかなというふうに思います。何でもいいよ、というわけではなくて、科学的な根拠に基づいて、やっていただければ。先ほど御紹介しましたエビデンスレポートで、それぞれの論文、大体10ページぐらい科学論文で書いてあるんですけど、それがA4サイズ1枚で全てまとめてありますので、いいところだけを書いてありますから、どういうところに効果があったか、要点も最初に書いています、2行ぐらいで。それさえ読めば何とかなっちゃうぐらいのところまで集約してありますので、お忙しい先生方、ぜひそういったところをやって、お時間があるときに論文は読んでいただくという形にしていただければよろしいかなというふうに思っております。

三つ目ですけれども、調査分析ですね。情報といったところになっていきますが、最新の情報を入手できるような手段を身に着けていただければなと思っております。業界に入っていただくのもそうです。学会等に入っていただくのもそうですし、今日お話ししました、インターネット、WEBサイトにあるような、先ほど言ったとおりの発信サイトといったようなものを、注力していく、見ていくというのも大切です。あのサイトは、私も最近また更新させていただいているんですけれども、あん摩マッサージだけのエビデンスレポートもあります。残念ながら日本の論文だけなんですけれども、そういったものもありますので、こちらの方も見ていただきながら、更新をしているようなサイトですので、しかも母体が厚生労働省ですので、間違いは書いてないと思います。我々も、このデータを提出するときにチェックを受けております。そのワーキンググループの先生と何回も何回もやり取りして、これはこういう書き方しよう、こういう書き方にしようというような形で、行政の方ってすごくてそこら辺はね。ものすごいチェックを受けて載せております。間違いは書かれていませんので、信憑性の高い情報、最新の情報を、手段自体を身に着けていただけたら、どこ行っても必ず役に立っていくかと思いますので、そういうような形で活用いただきながら、スポーツ現場では選手、またはスポーツ分野の関係職種の先生方と情報交換、意見交換をいただきながら、このスポーツというような形の分野を盛り上げていただければなというふうに思っています。

こういったことっていうのは、恐らくスポーツに限らず、臨床現場でも共通するようなところだと思うんです。ぜひとも今言ったような形の、恐らく一番目は選手ファーストじゃなくて患者ファーストになるかというふうに思いますが、そういったところの三つですね、押さえていただきながら、明日からの臨床に役立てていただければというふうに思っております。

途中早口でお聞き苦しいところがあったかというふうに思いますが、少し早めに終了してほしいというような御希望もございましたので、この辺で私のお話を終わりにさせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

 

○司会 近藤先生、ありがとうございました。

 

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