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連載・特集 浪越徳治郎先生の指圧(26):

浪越徳治郎先生の指圧(18)

  • 2010.12.28
  • 2024.09.20

22期 平島利文 4期 石原博司先生監修

徳治郎先生が『診断即治療』の前に施されていた、情動に働きかけ患者の臨戦態勢の心身を平常に導く業について述べていきます。はじめに情動について概説します。情動とは、人の脳を理性脳・動物脳・植物脳に大別した場合の動物脳が担う、怒り・恐怖・喜び・悲しみといった動物的な生命活動に重要な感情の動きを呼び、植物脳が担う自律神経、特に交感神経の働きに著しい影響を与えます。なお、理性脳は思考や情操といった高次の機能を担い人の言動に深く関わります。

不安や恐怖を抱いた患者の心身は、交感神経優位となり臨戦態勢となります。しかし、それらは理性脳の働きで抑制され、治療家に伝わることは稀となります。仮に治療家がそのことを読み取り、理性脳に適切に対応したとしても交感神経優位を副交感神経優位に導くことは容易ではありません。

植物脳が担う自律神経の交感神経と副交感神経は、互いに拮抗して働き、身体の恒常性を保つ機能を自律して発揮します。例えば、脳温が上がり過ぎる前に事態を感知し、汗を分泌させ予防します。また、脳温が下がり過ぎる前にも事態を感知し、産熱により予防し恒常性を保ちます。これは、身体の恒常性を保つための生理的な負のフィードバックです。しかし、情動に対しては生理的な負のフィードバックが生じることがないばかりか、恐怖が恐怖となり、さらなる恐怖を招くという正のフィードバックに転じます。また、情動と情操の摩擦が交感神経にさらなる正のフィードバックを起こさせることも稀ではありません。

また、意識は自認できる顕在意識と無意識と呼ばれる潜在意識に大別することができますが、顕在意識が意識の中に占める割合は氷山の一角といわれています。そのため、理性脳で抑制された患者の言動から潜在意識に潜む患者の情動を読み解くことは、もはや不可能とも思えます。さらに、それに理性で対応しようとすれば火に油を注ぐ結果を招きかねません。患者の心身を平常に導くためには、理性より情動に働きかける手段が最良だと考えます。

情動への適切な対応が、患者の心身を劇的に変化させることも稀ではありません。脳性麻痺児の母親からの手紙を掲載します。この手紙は、二度目の施術後に受け取ったもので、娘さんの施術時と普段の様子等が報告されています。

「徳治郎先生の指圧」による情動に働きかける効果を推測してください。

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