- 2009.12.28
- 2024.09.20
スペインの指圧の動き
日西指圧学院では、浪越基本指圧を学ぶことが初めて指圧を習う生徒の義務としております。また、浪越指圧ヨーロッパを立ち上げ、独自のインストラクター制度を設けて、浪越の基本指圧が指圧の原点であることをうたいヨーロッパに同志を募り普及しております。また小野田茂は、西洋人の身体を考慮し、かつ浪越の伝統をベースにした独自の方法理論を提唱しております。特徴として、西洋人の身体を考慮した特別の技術の導入があげられます。西洋人を4万時間以上にわたり指圧治療をした体験から、従来の日本の技術に西洋人のための解剖・生理学に照らし合わせ、指圧の基本操作に修正を加えました。例えば、西洋人の骨格は、極端に腰椎前彎曲の傾向があります。反対に、東洋人は一般的に腰椎と仙骨が平坦です。このような根本的な身体の違いを考慮して、西洋人の身体のバランスを正常に回復させる技術を研究しました。そして、25年にわたり西洋人の身体を研究した結果、独自のスタイルを創設したのがAZEスタイルです。
また、普及のみに目を向けるのでなく、指圧を日本文化の一面としてとらえて、かたくなに進んできました。日本伝統指圧の炎が燃え続くよう、一貫して指圧を日本の文化と位置付け指圧の理解者を増やす事に全力を注いできました。また、道を究めるために精神を鍛えることも指圧師のレベルを保つ上で必要不可欠であると説き、それを実践するためにはどうしたらよいかと、始終、試行錯誤を繰り返してきました。
ヨーロッパにおける教育のギャップ
実際、ヨーロッパにおいて指圧を普及するに当たって、最大の問題は日本との文化的ギャップの違いがひとつとして挙げられます。西欧諸国の文化で際立っているのは、すべてにおいて論理を優先するということが挙げられます。シャーロック・ホームズの小説のように、すべてにおいて立証が優先する世界であると長年のスペイン生活から実感しております。反対に、この世界での日本の教育は、問題解決の方法として直感をより重視して「習うより慣れろ」を合言葉に練習を繰り返します。反対に西洋人は、説明に時間をかけて興味を喚起させ、最初は頭で理解させる学習法に慣れています。しかしこの方法だと説明に手間がかかり、練習に時間が割けない欠点にたびたび遭遇します。日本の伝統的教授法は多くの言葉を弄して教えるのではなく、練習に重きを置き、頭で確信、理解することなく、おのずと身体で理解するという方法を主に取ります。もちろん、先生が教室で実用的ユーモアを用いて教示する事は、大変有効な教え方である事は言うまでもありません。
いい腕を持ってはいるが、その治療について筋道立ててうまく説明できない、反対に、治療についてうまく説明できるが、口ほどに経験をつんでいない。この2つのケースを考えれば、それぞれの長所を考慮して教授する方法は理想と言えます。そして指で押すのではなく、いかに“ハラ”を使うかと言った、いかにも東洋的な発想を正しく理解させて、正しい圧が治療にいかに必要であるかということを理解させることです。この方法を徹底させ中途半端になることなく、自分の道を見つけるべき方向性を指示することが大事になってきます。“守、破、離”の意味を学生に徹底的に理解させる事に心血を注がなければなりません。先達の技をよく見る、何が正しいか、自分でわかるようになるまで、師匠を信じ、次に学んだことを絶えず繰り返す。最後に、独自の創造性を持って指圧師として独自の個性を確立する。そして自分の能力、個性に向いたものを長年かけて、築いていく事が理想と言えます。
指圧の伝道師
世界で指圧の普及に命を削り、日夜駆けずり回っている指圧伝道師を紹介しましょう。一番目に、指圧海外雄飛のパイオニアとして、ハワイ愛泉指圧の因泥文彦先生が思い浮かびます。オーストラリアの浦川先生、北米ニューヨーク、OHASHIATSUの大橋先生、カナダ・トロントの斉藤健泉先生、同じくカナダ・ヴァンクーバー・ジャパン指圧クリニックの池永清先生。浪越指圧メキシコの浅田秀男先生。タオ指圧の遠藤喨及先生。先生は独自の理論でヨーロッパ及びアメリカにたくさんのお弟子さんを持っています。イタリアミラノの瞑想指圧の八尋雄二先生。先生は長年、沖ヨガを地盤にして幅広く地道にヨーロッパで普及を続けていらっしゃいます。ヨーロッパ医王会経絡指圧の佐々木一憲先生。先生はイタリア、フランスをホームグランドにして経絡指圧を伝道しています。オランダ・アムステルダムで長年指圧の教室を開いて指圧を普及している宮下、宮本両先生。フランスの秋田薫先生。群馬の岸先生も数々のワークショップをヨーロッパで開催して、ヨーロッパの各地にお弟子さんがいます。また、毎年ヨーロッパに日本指圧専門学校の看板を背おってセミナーに臨む小林秋朝先生と浪越雄二先生。両先生には、熱狂的イタリア指圧師グループの追っかけがいて、毎回のセミナーで数々のテクニックその人たちに惜しげもなく、伝授しています。日本においても日本指圧専門学校の教員木下誠先生。先生にはヨーロッパの指圧のグループが日本を訪問する度にセミナーにて毎回、お世話になっております。
このように指圧を愛し、日本の伝統手技療法である指圧の普及に命を燃やす侍が、世界を飛び回っております。
ハワイ愛泉指圧 因泥文彦先生(15期)
タオ指圧 遠藤喨及先生
医王会ヨーロッパ 佐々木先生
瞑想指圧 八尋先生
小野田先生(左)と岸先生(右)
日本指圧専門学校 木下誠先生(18期)
結び
ヨーロッパの指圧は、まさに曲がり角に来ております。言い換えれば、どの方向に歩みを進めるかということにため息を漏らし、そしてその答えが出るまでの間の足踏み状態が今、という状態です。美容に活路を求めて、顔の指圧。痩せる指圧。癒しを前面にうたう指圧。なんでもありの指圧がヨーロッパにはびこっています。しかし、指圧の本来の目的は、癒し、ストレスなどの慰安的要素の高いものではなく、自然治癒力を高め、体からの危険信号である痛みをとる治療が原点であると私は解釈しております。痛みを取るには、やはり勉強が必要です。そして、たくさんの治療をとおしての経験が必要です。治療経験のない先生が、どうして生徒を教えることが出来ますか。慰安の仕事は、私たちの世界には必要ありません。指圧の真の目的は治療、すなわち患者さんに笑顔をとり戻らせることを通して社会に貢献する、これに尽きると思います。
最後は精神論まで言及しましたが、ヨーロッパの指圧が指圧本来の哲学をもう一度見直して次のリーダーにうまくバトンタッチする事、これが私達の使命です。日本の指圧界が忘れかけている指圧、そして医療の一環としての手当てがヨーロッパで花開くことを夢見て邁進したいと今新たに思っております。
日西SHIATSU学院 院長
小野田茂
www.shiatsudo.com
www.namikoshishiatsueuropa.com
e-mail: escuela@shiatsudo.com