1.　骨格系支持と筋肉系支持の相違

次に骨格系支持と筋肉系支持の相違が現れるのは肘関節である。今度は肘関節の支持実験を実施してみる。

2.　肘関節の支持実験について（添付の写真資料を参照）

肘関節を通常の筋肉系支持（これが普通）とプライマリーセットに基づいた骨格系支持の２通りで、力を受けた状態での支持の相違を確認する。

(1)筋肉系支持における力に対応した支持

• 両膝を合わせて膝立ち姿勢をとります。
• 深呼吸と伴に両腕をだらりと落として自由にします。
• つぎに手掌を上向きにして、両腕を上腕と前腕が直角になるように構え、水平になった前腕を位置を保持できるだけの力で支えます。
• その上向きの両手掌に、補助者が手掌を重ねて体重を加えます。
• 前腕を保持できるだけの力では、補助者の体重を支えることは全然できません。
• 補助者の体重に対抗して、両腕で保持しようとすれば、肩関節周囲や背中の筋肉および上腕筋と肘に関わる筋群に多大な負荷が生じるのが実感できます。
• このように、筋肉系支持では自らの肘関節に加えられた負荷に対しては、肩甲骨に停止する筋群と上腕筋及び前腕に関わる筋群で支える必要があります。

(2)骨格系支持における力に対応した支持

• 両膝を合わせて膝立ち姿勢をとります。
• プライマリーセットを実施します。
• つぎに手掌を上向きにして、両腕を上腕と前腕が直角になるように構え、水平になった前腕を位置を保持できるだけの力で支えます。
• その上向きの両手掌に、補助者が手掌を重ねて体重を加えます。
• 最初に完全な骨格系支持になるため、ほんの少し前腕が下がりますが、それ以降は、前腕を保持できるだけの力で補助者の体重を支えることができます。
• 補助者の体重は、骨格系支持の肘関節から肩関節を通じて鎖骨から全身の骨格で保持されるため、肩関節周囲の筋群及び上腕と前腕に関わる筋群には殆ど負荷が生じません。
• このように、骨格系支持では自らの肘関節に加えられた負荷に対しては、前腕を保持するための筋力だけで対応可能です。

3.　考察

上記の実験からも解るように、プライマリーセットに基づいた骨格系支持の状態を維持していれば、肘関節に加わる力はグローバル筋を殆ど利用しないで対応が可能となります。このことが、一般に言われるところの「力を抜いて〜」に相当すると考えられます。それ故、この状態を維持していれば、肘関節に関わる筋群及び上腕筋類を最も有効に使用できるのです。筋肉系支持では、肘関節に加わる力を肩甲骨に停止する筋群や上腕筋及び前腕に関わる筋群で支えなければならないため、肘関節に関わる筋群及び上腕筋類を最も有効に使用するのは難しくなります。