- 2024.04.23
- 2024.09.20
私は、今スペイン(マドリッド)で、指圧治療センターと指圧アカデミィーを運営しています。
日本に帰国するたびに思うことは、駅前や繁華街には、整体を名乗る、マッサージ屋さんが目立ちます。
私などは、整体と聞けば、まず第一に野口春哉先生の創始した野口整体が思い浮かぶのですが、どうやら違うことは確かなようです。
また、癒しという言葉や、もみもみなどといった治療とは、程遠い言葉も頻繁に聞きます。
所が、指圧という看板は、あまり見かけません。特に若者の会話から指圧という言葉は、ほとんど聞かれません。
いかんせん、手技療法の患者層は、大半がご婦人ですので、ご婦人のファンが、つかなければ負の方向に走るのは当然です。カリスマの指圧レジェンド徳治郎先生を知る人もどんどん少なくなっています。
そんなこともあり、もう一度、指圧とはなんぞやを我々指圧業界の一員が、初心に帰り、根気よく患者さんに知らせる必要があるようです。
私はというと、スペイン人にイロハのイから指圧を知らしめてこざるをえなかった歴史があります。
この素朴な疑問に答えるためにこのマヌアルを作成して生徒に指圧の授業の資料として配布して生徒に暗記させています。ごくごく当たり前のことですが、結構このマヌアルは、どこかのハンバーガーチェーンよろしく今でも役に立っています。
患者さんの素朴な疑問
1、 なぜもみ返しが来るのでしょうか。
強いマッサージや按摩(もみ治療)を受けた時に、あくる日など逆に体が痛くなったり、余計コリを感じたりする現象をもみ返しといいます。指圧の場合は,起こりません。なぜなら指圧はもんだりせず、ただ圧するだけだからです。指圧は、日本独自の治療法で、全身の筋肉を約660のポイントを圧していくもので、プロによる治療においては、もみ返しという症状は、起りません。
マッサージや按摩の施術でもみ返しが起こるのは、短時間で強くもんだり、もみ残しがあったときです。時間をかけてゆっくりきちんともんでもらえば、もみ返しは普通ありません。又コリがひどいときには、もみ返し(瞑眩)の症状を呈する事があります、しかし普通翌日には、その症状は楽になっている場合がほとんどです。
手技療法を受けた後は、刺激療法なので、筋肉がそれだけ運動をしていることになりますので、直後は、疲労感やだるさが残ることがあります。
2,痛い、手技療法ほど,効果が期待されるのですか。
まず体が緩んで楽になるような気持ちよさが、
体感できる施術が、一番効果があります。たとえ
痛みを伴う施術でも、アーそこそこというよう
な、心地よさを伴う痛みでなければ、効果があり
ません。
ただ強い力で押したり、ポイントを外れた痛み
は、体(筋肉)が縮まって硬くなるので逆効果で
す。最近痛いマッサージを受けて我慢をするの
が、効果があると謡う似非治療家もいますが、強
くて痛いのがいいというわけではありません。
3、 食事や入浴の直前、または直後に施術を受けてもいいのですか。
いつ受けても問題はありません。ただお腹だけは、食後すぐの時間を避けて、1時間ぐらいの時間をおいて受けることをお勧めします。
お風呂に関しては、前でも後でも構いません。体が温まって柔軟性が増し、血液の循環もよくなることを考えれば、入浴直後の方がいいのかもしれません。指圧を受けると心身ともにリラックスして眠くなるので後でお風呂に入ろうとしても寝てしまうかもしれません。
4、 指圧を受けると体が楽になったり気持ちがよくなるのはなぜですか。
指圧で、体に圧を加えると皮膚の神経を介して全身の血液やリンパ液の流れを良好にします。又内蔵の機能を整え、ホルモンの分泌を促進させます。とかく自律神経の交感神経が高まる機能が優先するストレス社会において副交感神経優位にして、ストレスを解消させる働きがあります。
又肩凝りや、腰の痛み等のつらい症状は、多くの場合、筋肉の緊張と疲労によって新陳代謝が、悪くなるために起こります。指圧を受けることにより、神経,血液、リンパ、ホルモンが刺激されます。このことにより体が活性化して、コリや痛みを解消させます。又内蔵機能も活性化します。
また皮膚からの圧による刺激は、脳内の自律神経の中枢や情動の中枢に伝わり気持ちよさを感じたり、精神的にリラックスすることを可能にします。指圧治療は、精神面も含めたトータルな意味で癒しといえるでしょう。
5、 10分、15分のクイックマッサージは効果があるのでしょうか。
例えば、肩こり、首コリなら、その部位だけなら効果があります。コリや痛みがあるけれども時間がないというようなときには有効な方法でしょう。しかし指圧は、全身を調整して悪い所を整える療法と定めています。俗にいう、全身治療と部分治療の違いです。全身治療は、部分治療に比べてその何倍もの効果があります。クイックマッサージに頻繁に通っている人は一度、本格的な指圧を受けてみるのも一考です。効果の違いが体を通じて実感できます。
6、 指圧をしてはいけないのは、どんな時ですか。
伝染病、がん、炎症、潰瘍、熱がある時、手術後、感染症特に皮膚病、体が非常に消耗している時は、受けない方がいいとされています。この中のいくつかは、プロなら施術できる場合もありますが、素人は、絶対にやらない方がいいでしょう。例えば、胃潰瘍などは刺激を与えたために傷口から出血するという危険性も考えられます。骨折に関しては、一般的には、手技療法は禁句ですが、プロが症状に応じて患部の周辺を施術すると早く完治します。捻挫も炎症が起きている時は、患部に触れず、その前後に指圧をして血行を良くして炎症を早く引かせることも可能です。いずれの場合もプロに相談してから判断をします。
7、 いい治療院や施術者に出会うにはどうしたらいいでしょう。
まずは、評判のいいところを探すことです。施設が清潔で対応がいいことも大事な条件です。後は実際に施術を実際に受けてみるしかありません。判断の基準は、つらさが取れて、施術を受けた後、楽になっていればそこはいい治療院です。施術者が施術中に圧仕方の按配を聞くなど、思いやりのある治療をしてくれる所なら信頼関係を作りやすいでしょう。
8、 どんな服装で行けばいいでしょう。裸になったり恥ずかしいことは、ありませんか。
指圧は、日本の伝統手技療法です。オイルマッサージ等とは、異なり、裸や下着のみで、患者さんが施術を受けることはありません。
クイックマッサージは、別として一般的には、治療院が用意してある治療着や浴衣を着たり、自分で持って行ったTシャツやスエットに着替えます。その時は、硬いガードルなどは、脱いだ方がいいのですが、ブラジャーやショーツは、つけたままでも大丈夫です。全体治療を基本として、間接的に肌に親指の指腹が接触します。
しかしプロは、顔面,頭部、腹部は、治療師によっては、直接手掌部を接触させて治療することがあります。
9、 指圧が癖になって頻繁に受けないと具合が悪くなることはありませんか。
癖になるようなことはありません。指圧を受けたいと思うときは、体が疲れを感じている時ですから,躊躇せずにすぐにでも受けましょう。癖になるといわれるのは、体が不調に敏感になった証拠です。指圧を受けたことがない人は、または、長い間受けたことのない人は、たまりすぎた疲れやコリで知覚鈍麻になってしまう人もいてこの状態が続くと病気に結び付く場合があります。時々時間を作って、時々指圧を受けていれば疲れやコリに敏感になり体の信号が赤になる手前で手入れ(予防医学)の重要性を理解できます。
10、定期的に受けた方がいいのですか。毎日でもいいのですか。
定期的に受けた方が、高い効果を期待できます。あまり間隔を長く置くとせっかくほぐしたコりが、固まってしまいます。それを取るのに時間がかかってしまいます。
症状や体調にもよりますが、目安としては1週間に一度を理想とします。長くても2週間に一度は、指圧を受けたいものです。
指圧療法の一回の治療は、50分から1時間が理想で、一回の施術を90分、120分の治療より、短い時間の治療でも回数を増やした方が、より効果があることが認められています。
指圧治療の1セッションの効果が持続するのは、3日から4日といわれています。痛みがある時は、週に2,3回のセッションを常とします。癖になることはありません。したがって毎日受ければ、これはこれで理想といえます。
11、痛みやコリは、温めた方がいいのですか,冷やした方がいいのですか。
症状によって違いますが、コリは原則的に温めることで血行を良くして新陳代謝を高めて老廃物を取り除きます。しかし痛みで炎症を伴うものは患部を冷やすことにより炎症や痛みを和らげます。
氷で冷やすと神経を一時的に麻痺させて痛みを感じないようにする効果があります。捻挫、ぎっくり腰を起こした直後は、炎症を起こしています。こんな時は、炎症が収まるまで冷やしてから次の段階として今度は温めて回復を早めます。
12、施術者との相性は、ありますか。
買い物をするときでも、感じのいい店員やこちらの希望を良く分かってくれる店員がいるよう
に、施術者との相性はあります。特に、指圧は肌と肌が触れ合うので相性がいいか悪いかは、と
ても大事な要素です。施術者の印象次第で、同じ治療を受けても利き方が違うことがよくありま
す。又感じはいいのだけれども、手で触れられると気持ちがよくないという場合もあります。し
かしまず大事なのは、技術です。技術が優れていれば、効果は大きいし、そのことによって相性も良くなるかもしれません。印象だけでなく技術や、治療をする姿勢も見て判断してください。慣れは、治療効果を半減させます。いろいろな治療師に受けると違った刺激を受けられますので、効果としては、その方がよいかもしれません。
13、指圧従事者は、みんなしっかりトレーニングを受けているのですか。
日本においては、指圧師になるには、3年間の専門カレッジに通学して、卒業後、国家試験を
受けて合格した段階で初めて仕事ができるといった、完璧なライセンス制度になっておりま
す。
スペインの場合は、まだ国家試験制度まで至っていません。
スペインの実情としては、マドリッドにある日西指圧学院が、日本指圧専門学校の卒業生である小野田茂(1984年)が中心になって1600時間の指圧哲学、指圧理論、指圧実技をシステマチックに整理して教育しています。
特に指圧治療の創始者浪越徳治郎のメソッドを取り入れて実践指圧治療を伝授しています。
指圧は、代替療法(予防医学)の旗手を務めて前進しております。
療法という言葉が、指圧の言葉の後に続きます。クライアントではなく患者さんを施術する仕事です。そのことを誇りに思い日々、指圧師は、トレーニングして、患者さんを治療しています。
指圧という言葉を使用してクリニックを開設して、そこで受けた患者さんの状態が悪くなったという噂も、この頃頻繁に聞くようになりました。治療院を選ぶときは十分お気を付けください。
塾SHIATSUPRACTOR 塾長 小野田茂
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素晴らしい資料ですので、ぜひ周囲の指圧師仲間やクラスメイトに共有ください。