イベント報告
青梅研修レポート
毎年、恒例の同窓会地方研修が今年は東京都青梅市で行われました。
連日の猛暑が続いていますが、研修会場の宿坊がある御岳山の標高約1,000メートルの別世界な涼しさで、久しぶりにクーラーの無い快適な生活を味わえました。
会場となった宿坊は、御岳武蔵神社への参拝者や登山者が宿泊する宿坊を使用しました。掲載あるいて15分ほどに御岳武蔵神社があり、また近辺には修行者が滝行で打たれる滝も多くあり、普段は味わえない静謐な空気の中での研修となりました。
講習はスペインから来日した25期、小野田茂先生の「浪越指圧の応用による痛みを取る指圧」3期、稲場啓護先生の「井沢先生の経穴」の二題でした。
小野田先生「浪越指圧の応用による痛みをとる指圧」
患者さんを診断する方法として歩行や日常生活上の習慣的動作の特徴(癖)から治療のポイントすなわち指圧点を特定し、患者さんに最も負担のかからない横臥位を治療の基礎とし、まさに臨床に沿った明日からでも即使用が可能な施術法を披露していただきました。小野田先生は他の手技療法との決定的な違いは横臥位の指圧治療にありと力説していました。
横臥位での指圧ポイントをしっかり圧することにより体性神経が原因となる疾患と自律神経のアンバランスによる痛みの両方(フィズカルペインとメンタルペイン)を効果的に治療することができると教えていました。
解剖学に裏打ちされた明確な理論でありながら、実際の施術は、浪越の横臥位の基本指圧をベースにしたものであり、理論と実技の見事なコラボは、長年、ヨーロッパにおいて指圧を広められてこられた小野田先生ならではであり、受講生は瞬く間に講習に引き込まれていきました。
稲場啓護先生「井沢先生の経穴」
講習は経穴経絡を中心とした東洋医学のお話から始まりました。東洋医学や経穴の話となると学校の授業では経穴を覚えるのに苦労した記憶が強い方も多いかもしれませんが、味気ない話になりがちな東洋医学の理論が稲場先生にかかると、実に具体的かつ合理的な理論として浮かび上がり明確になります。経穴経絡の根本をなすのは陰陽の思想であり、天の陽気と地の陰気が左右の両母指に和合する。それを浪越徳治朗先生は「天地一指」という言葉に表された。また押圧の際、相手の身体が緩んでいく独特のリズムがあり、数字で表すと1、2、3となるがそれぞれの押圧が分離、独立している訳ではなくそれぞれが相互に関連し影響し合う。それを東洋医学では「天ー地ー人」と表している、とのことでした。
30年前に稲場先生にこのお話を聞いた小野田先生はスペイン指圧学校のシンボルマークを「人」の文字にされたそうです。
稲場先生のお話は、浪越徳治朗先生がその該博な知識と高い人格に全幅の信頼をおかれた井沢先生の教えを伝えるスケールの大きなお話でした。稲場先生と指圧学校が持つ、歴史の深さに皆感じ入った講習となりました。
今までの地方研修では最多となる41名の卒業生が集まっていただきました。参加者の多くは開業されている卒業生でした。開業の形は様々でしたが、どのような形で開業されていても、また勤めている卒業生にとっても、稲場先生の経穴経絡と指圧を見事に融合したお話と実技や、小野田先生の横臥指圧とその効果の解剖学的な分析は、大きな実りになったのではないでしょうか。そして何より、卒業生同士の久しぶりの再会と語らいは参加者の心のエネルギーを充填してくれました。みなさんまたお会いしましょう。(事務局)