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浪越徳治郎先生の指圧(17)

2010/12/21 22期 平島利文 4期 石原博司先生監修

診断と治療を同時に行う『診断即治療』は、臨床現場の指圧師にとって有益な技術です。徳治郎先生ご自身も『診断即治療』を指圧の真髄であると説かれていました。しかし、私の脳裏に焼きついている、知的障害を持つ初対面の脳性麻痺児に自然に近づき、一瞬にして身を任せさせる徳治郎先生の業の凄さ。これこそが「徳治郎先生の指圧」の真髄であり、徳治郎先生を名人に押し上げた業の一つです。徳治郎先生はこの業を『診断即治療』の前に施されておりました。この「徳治郎先生の指圧」の真髄について述べていきます。

笑顔の下に素顔を隠す患者は稀ではなく、特に初診患者が、治療法や治療家に対して不安や恐怖、あるいは疑心を抱くのは当然だと考えます。そんな患者の心身は、患者本人の理性とは無関係または逆行し、心理的な緊張で生じる「心性防衛」や僅かな刺激にも過剰に反応する「筋性防衛」を起こし、無意識に臨戦態勢に入っています。この認識に欠ければ、臨戦態勢そのものを見過ごしてしまいます。

また、理性に働きかけ、臨戦態勢の心身を平常に導くことは容易ではありません。しかし、情動に働きかければ結果は異なります。情動に働きかけ、患者の心身を平常に導くのが「徳治郎先生の指圧」の真髄なのです。

1996年より脳性麻痺児の父母に対し「徳治郎先生の指圧」の指導を始めました。講義は全くの素人の私が講師を務めたのですから、父母の皆さんは大変だったと思います。しかし、「徳治郎先生の指圧」の必須、非必須事項は容易に理解し、習練に励んでもらえました。その後、2003年から選抜した有資格者を対象に「徳治郎先生の指圧」の継承者育成、技術化および臨床等の研究会を始めました。メンバーの選抜ミスが原因かも知れませんが、最初につまずきました。父母には容易に理解してもらえた「徳治郎先生の指圧」の必須、非必須事項を、彼らは、理解できないというより受け入れてくれませんでした。今では「徳治郎先生の指圧」を継承し、指導する立場に育った彼らですが、彼ら全員が「徳治郎先生の指圧」の必須、非必須事項を理解するには数年かかりました。彼らが、受け入れることさえできない理論を説く私に従ったのには理由があります。それは、私が「徳治郎先生の指圧」の真髄を彼らが嫌になるほど毎回のように見せ付け、この技術が欲しければ私に従えと説いたからだと考えます。

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