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浪越徳治郎先生の指圧(13)

2010/11/23 22期 平島利文 4期 石原博司先生監修

私は、指圧学校の学生時代に寮生として、治療室勤務を命じられておりました。当時、一階は受付とサウナを備えた風呂があり、二階はすべて治療室で、一日に百五十人から二百人が来院されていました。治療室の風景は号令こそありませんが、五階の道場での実技時間のようでした。施術は患者さんの疾患や愁訴に関わらず、左横臥で前頚部一点目から始まり腹部で終了しました。ですから施術部位を見れば、時計を見ずとも現在時刻が容易にわかりました。

治療室での寮生の仕事は電話連絡、カルテ整理、先生方への連絡および施術前後の患者さんの案内等が主なもので、治療室内には絶えず気を配ることが命じられていました。そのため二年に渡り、徳治郎先生を始め治療室常勤の先生や治療室非常勤等の先生および学校の実技講師の先生方等、三十名以上の先生方の各人各様の施術姿勢や加圧法やその時の患者さんの様子等を直視することが許されました。また、徳治郎先生と各先生方の加圧点に対する移動動作や加圧動作および自支や把握動作等(【浪越徳治郎先生の指圧(12)】参照)を比較検討することも容易でした。

なお、徳治郎先生の場合、お一人で患者さんの全身に施術されることはありませんでした。まず、前座の先生が“前頚部と腹部”を除いた全身を施術し、先生が前頚部と腹部および仕上げの施術をされました。私が最も注意深く見学したのは、先生の臨床腹部指圧で、先生からの教えを私が私なりに理論化した「徳治郎先生の指圧」との相違点でした。徳治郎先生の“前頚部と腹部”でほとんどの疾患に対応できるという教えを開業時から実行していますが、これらの基礎となったのが、徳治郎先生に対する施術と旧浪越指圧本部センターの治療室での経験でした。

二年生の中頃と記憶していますが、臨床家で実技講師だった門間英夫先生に「何人くらい押せば、指圧を理解できるようになれるのでしょうか」と尋ねたことがあります。先生は「練習やボランティアで何人押しても指圧を理解することはできない」とおっしゃいました。そこで「ではどうすれば」と質問したところ「まず、一万人分の税金を国に納めなさい。そうすれば患者が君の指圧の意義を教えてくれる」といった内容の答えをもらいました。既に課題は十倍以上をこなしました。しかし「指圧を理解できたか否か」の問いに対する答えは見出せません。

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