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浪越徳治郎先生の指圧(6)  

2010/10/5 22期 平島利文 4期 石原博司先生監修

「徳治郎先生の指圧」が幻の業となった第三の理由は、免許取得に関わる当時の事情があります。当時とは、日本指圧専門学校が、日本指圧学校であった頃のことです。現在の修業年限は三年ですが、当時は二年でした。技術は、頭で理解すれば習得できるというものではありません。繰り返し習練する必要があります。ですから、技術の習得に修業年限が大きく関わります。しかし、伝えたいのは修業年限ではなく免許取得に関する当時の事情です。

当時は、免許取得のために学科試験だけではなく、実技試験にも合格することが不可欠でした。さらに、正味数分間の実技に指圧が含まれることはほとんどなく、あん摩かマッサージで行われました。免許取得に、実技試験があることは一年生の時から知らされていましたが、それが、あん摩かマッサージで行われることを知ったのは、二年生になり、あん摩・マッサージの実技の授業を受け始めてからのことでした。また、一年生の時に「学科試験には出題されない」と聞かされた経穴経絡でしたが、実技試験の最中に口頭試問されることを知ったのもこの頃でした。

学校の授業として行われるあん摩とマッサージの実技時間は、双方を合計しても、指圧実技の時間より比較にならないほど少ないものでした。しかし、一人では練習にもなりません。さらに、すでに授業が終了した経穴経絡を慌てて始めようと教科書やノートを開いても、それまでの付けが回って独学状態でした。「免許が取れなければ卒業しても意味がない」、「指圧を覚えるのは免許取得後でいい」を合言葉に、「実技の試験官は盲人には甘いが晴眼者には厳しい」という噂(実際にはそうではありませんでしたが)に脅威を感じながら、「他流を禁ずる」と書かれた道場で、文字通り、指圧実技の時間でさえ講師の目を盗みひたすら、あん摩・マッサージの実技習得に励みました。にわか仕込み(泥縄方式)で、如何にして試験に合格できるレベルにあん摩・マッサージの実技を向上させるか。即ち、どうすれば自分の手技を試験官にあん摩・マッサージと認めてもらうかが課題でした。そのために必要なのが【徳治郎先生の指圧(1)】にも記載しましたが、あん摩・マッサージの手指操作で最も重要となる“指先を反らして行う”圧排動作の習得です。当時、用語さえ知らない圧排動作を免許取得のため、懸命に習練しました。

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