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指圧へのこだわり連載

指圧へのこだわり4 抗重力筋

2024/5/20 小野田茂

抗重力筋とは

抗重力筋は地球の重力に対して姿勢を保つために働く筋肉のことです。下腿・大腿・腹部・胸部・首の各部前後に張り巡らされ、前後互いに伸び縮みをしながらバランスを取っています。

立っているだけ・座っているだけでも常に抗重力筋のどれかが緊張しています。最も疲労しやすく収縮したままになりやすい筋肉といえます。

本来抗重力筋が正しい状態にあると、抗重力筋全体がバランスを取り合い身体の歪みが修正されます。日常生活で身体に癖がつくと、抗重力筋は癖のある悪い姿勢を記憶して身体の歪みを作り、慢性の肩こりや腰痛を引き起こします。

例えば座り仕事・立ち仕事のように一定の姿勢を続けることは抗重力筋の疲労や収縮に繋がり、抗重力筋同士のバランスが乱れます。このような場合は、ストレッチングなどの運動で緊張を積極的にほぐす必要があります。

また座り仕事を長期間続け歩かないことは下半身の抗重力筋を退化させ、抗重力筋同士のバランスを崩して姿勢が崩れます。予防のためにウォーキングなどの適度な運動をすることが望ましいと考えられます。

 

厚生労働省の付属機関である、国立保健医療科学院が、抗重力筋とは何かを説明しています。(参考文献 Eヘルスネット (厚生労働省) 国立保健医療科学院)

考察

その中の説明で、二本足での生活を日常とする人間が、この抗重力筋が、重力に対するストレスに対して絶えず正しい効率的な姿勢を保つために働いているとうたっています。この抗重力筋の働きが、低下すると肉体及び精神の多方面にわたり悪影響を及ぼすことはもちろん想像できます。

特にご高齢の人達の抗重力筋のメンテナンスは、疾病の予防に直接つながります。

特に若い人においても腰痛症、スマートフォン症候群、肩こり、首凝りに至る生活習慣病の大部分、そしてそれらに付随するであろう、うつ病等の精神疾患の大部分が、抗重力筋の拘縮、及び萎縮が、直接及び間接原因とも言えそうです。

特に体の奥にあるインナーマッスルに重点を置いた治療は、現代人に対して大変有効です。

身体の奥にある筋肉は、筋肉作用のほかに体の安定性を司る筋肉が多いと、ハワイ大学の解剖実習で、インストラクターが説明していたのを思い出します。

またこの定義の中にストレッチング(伸展法)、そして予防医学の一環としてウオーキングを推奨していまが、この伸展法と指圧療法の合体、そして指圧療法とエクササイズ(ウオーキング)合体が、より理想的な予防医学になると感じた次第です。

指圧療法は、手掌部及び特に親指による圧法により身体のバランスを整え、人間が本来持っている自然治癒力を高める、第三の医療(予防医学)で、代替療法の一つの柱として貢献しています。

指圧療法の疾病原理として次の7つに要約されています。

1、 皮膚機能の活性化
2、 体液循環の促進
3、 筋組織の活性化
4、 骨格の矯正
5、 神経機能の調和
6、 内分泌の調整
7、 内臓器官の正常化

この事が何を意味しているかと言えば、このストレス社会において抗重力筋を正常に保つことへの貢献は、指圧師の役割と言えます。

ちょっと前まで4人に1人が、癌に侵されるといった厚生省の報告が、今では、2人に1人の割合と言い出しました。このこと自体既に現代人は、驚きもせずに受け止めています。

実際、現代の指圧療法は、重度の腰痛症や頚椎障害は、深部の筋肉にまで届く、しかも心地の良い圧法を使用しています。肩こりから首凝りに、手技療法の十八番が変化した昨今、ネオ指圧として、アウターマッスルを治療に重点を置いた指圧から、インナーマッスルに重点を置いた指圧に温故知新しているのが現状です。

実際スペインの指圧本部道場では、胸鎖乳突筋、腸腰筋、前脛骨筋の3つの筋肉がどう経絡よろしく筋膜を通して、繋がっているかを模索しつつ臨床研究をしています。

体のバランスを整え人間本来持っている自然治癒力を高めることを療法とする指圧は、未来の医学(第3の医学、予防医学)と言えます。この抗重力筋を重点的に観察し、そして重視した治療法は、体のバランスを整える指圧療法においても、最適と言えます。

姿勢を保持する抗重力筋の主な筋肉を列挙します。

姿勢保持筋(リスト)

身体の前面
1, 胸鎖乳突筋 2、 腹横筋 3,腹直筋 4腸腰筋(大腰筋)
5,大腿四頭筋(大腿直筋) 6,前脛骨筋

身体の後面
1頭版状筋 2,半棘筋 3,後頭下筋群 4、脊柱起立筋群 5,大殿筋 6、ハムストリング(特に大腿二頭筋)7、下腿三頭筋(特にヒラメ筋)

身体のサイド
1、 中殿筋 2、大腿内側(内転筋群)3、大腿筋膜張筋4、腰方形筋

末端の手、足の筋肉
1,足の親指:長母指屈筋  長母指伸筋
2、 手の親指と小指:母指対立筋 小指対立筋

代表姿勢保持筋

胸鎖乳突筋、腸腰筋(大腰筋)、前脛骨筋の三筋肉は、姿勢保持筋として(体のバランスを整える筋肉)指圧治療においてもっとも重要視される筋肉です。それでは、基礎編として各筋肉の起始停止及び、特徴的な作用を再確認しましょう。

お医者さんの問診の際の

1, よく眠れますか(胸鎖乳突筋)。
2, 食欲はどうですか(前脛骨筋)。
3, 散歩してますか(大腰筋)。

この三筋の診断即治療が、指圧治療基礎と考える次第です。

胸鎖乳突筋

【起始】
起始は二頭あり、一頭は、胸骨端の上縁、もう一頭は、鎖骨から出ています。
【停止】
乳様突起と後頭骨の外側部に付着。
【作用】
1. 両側の筋が、共に働くと頭を後方に引く。つまり顔面を上にあげる。
2. 片方の筋のみ働くと頭を反対側に傾ける、はてなのポーズをする。
3. 頭を固定すると胸郭を引き上げる。
スマートフォン症候群における筋委縮が、顕著で特に停止部の硬結が、めまいや首凝りの原因になります。後頭骨の指圧、及び停止部の硬結を伸展法と指圧で時間をかけて処理します。迷走神経を調節する部位。

 

腸腰筋 (大腰筋)

脊椎(上半身)と下肢(下半身)をつなぐ人体で唯一の筋肉である。この筋肉は、姿勢保持の代表的筋肉です。自分の脚で立ち、脚を持ち上げてしっかり歩くための役割があります。大腰筋が、長時間のデスクワーク等で硬くなると骨盤が前に傾斜します。
【大腰筋の起始】
浅部と深部の二頭があり浅部は、第12胸椎から第4腰椎までの各椎体から,深部は、全腰椎の横突起から起こり、二つが合流して下方に向かい、鼠径靱帯下の裂孔を通過して大腿前面に行く。
【大腰筋の停止】
大腿骨の小転子に付着。
股関節の屈曲、大腿を上方に伸展、回外。下肢を固定すると、腰椎と骨盤を前下方に回旋する。

老人のスリ足は、大腰筋の萎縮に起因する。大腰筋の伸展のエクササイズは、多方面にわたり、体の活動を活発化させます。老化は、体の後面からと言いますが老化は、大腰筋の萎縮といっても過言ではありません。大腰筋の治療は、主に腹部治療(按腹)で解決します。

前脛骨筋

胃の経絡三里の筋肉、前脛骨筋です。前脛骨筋は、私ども阿是指圧のアスパの理論から言うと右前脛骨筋は左大腰筋、左前脛骨筋は、右の大腰筋に反射します。
また前脛骨筋の治療は、胃腸障害、下半身の血液循環(下半身の体温の正常化)、瞑眩予防、エンドルフィンの分泌促進、循環障害等の緩和、多方面にわたり、諸症状を緩和させる万能ポイントです。全ての治療において使用されるポイントです。阿是指圧では、ポイントとして重視するのではなく、筋肉全体を面ととらえ、最低でも3ラインを設けて、最後に重要ポイントを持続の圧で、処理します。あくまで面にあった垂直圧を使用します。

【起始】
頚骨の外側面、下腿骨間膜、下腿筋膜の上部から起こる。
【停止】
第一楔状骨、第一中足骨底の足底面に付着。
【作用】
足の内側の縁を持ち上げて足を背側方に屈する足を固定した時は、下腿を前方に傾ける。
後脛骨筋は、反対の動きをする。この後脛骨筋の操作が、重要である。

以上3つの筋肉の基礎をおさらいしました。

参考文献

身体運動の基礎 学芸出版社 高木公三郎箸
Eヘルスネット(厚生労働省)国立保健医療科学院

塾SHIATSUPRACTOR 塾長
小野田茂

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