エッセイ
基本指圧による画期的治療効果、学会で報告
2009年7月4日に東京国際フォーラムで開催された「第26回日本二分脊椎研究会」(順天堂大学医学部小児外科主催)において、基本指圧を施術した患者に係る、「二分脊椎症の自力排便に関する効果」を、心身障害児総合医療センター脳神経外科の藤原一枝先生から報告していただけたことは感無量です。
全国の二分脊椎症を研究している医師(脳神経外科、小児外科、整形外科、看護科、心理科、泌尿器科、リハビリテーション科等)が、一堂に会しての学会です。今回は27演題が報告されました。報告は的を絞り、与えられた短時間の中に的確な内容でまとめられたものばかりで、どれも分かりやすく大変興味深いものでした。また患者のためによりよい医療を、と研究している報告には感動し、頭の下がる思いでもありました。
私の基本指圧治療例は「看護・その他」の項目での発表で、『洗腸6年のあと、排便の自立を得た一例』と題して藤原先生が登壇してくださいました。二分脊椎症は、先天性脊椎の欠損(形成不全)により、歩行と排泄に障害を持って生まれる先天性異常です。
今回の基本指圧治療例(中1男子)は、当初、体幹の揺れが激しい不安定歩行の改善が目的でした。基本指圧に、桐朋学園大学教授・矢野龍彦先生に考案していただいた体操を組み合わせたものです。ナンバ式骨体操を基本に作られた身障者向けの体操で、私が「チャレンジ・ナンバ」と名づけさせてもらいました。
それまで、多量の水(1回4リッター)を使っての腸内洗浄を、週2回行うことで管理していた排便が、約10ヶ月間の取り組みの中に、自力でできるまでに改善したのです。現代医学上で有り得ないことが、基本指圧の効果により起きました。患者がたまたま脳神経外科を受診する機会があったおり、担当の医師、藤原先生がその様子をお聞きになったのが、今回の発表の発端です。
先生は「学会で報告する意義は大きい」と評価してくださり、このたびの二分脊椎症研究会で報告の運びとなりました。同時に、報告に対する参加医師からの質問の端々にも、基本指圧の効果が画期的であったことが良く分かりました。
「洗腸をすすめるものとしては、大変ショッキングな報告で…」(星ヶ丘厚生年金病院・泌尿器科医師)
「とても興味深い内容であったのですが…」(神奈川県立こども病院の医師)
西洋医学では解決のつかない問題を、基本指圧でクリアしたのには本当に驚いたようです。しかもなぜこれほどの効果が出せたのか、藤原先生流の解析にはまたまた脱帽しました。
1つには、患者・家族と治療者の熱意と情熱
2つには、本人のやる気
3つ目は経済性の無視
先生のおっしゃることは、まさにその通りなのです。今も毎日彼(患者)から、その日の排便の様子が電話で報告されてきます。自力での排便ができるか否かでは、当然、身体内部の機能等に天地の差があると思われます。きっと寿命まで違ってしまうはずです。
実は基本指圧によって、機能的な問題のみならず、その他のさまざまな問題点が解決できている事実は、以後の人達に活かされるべきだと考えています。
今回は排便の自立を得たことに的をしぼった形での報告ですが、指圧効果はそれだけではないのです。私は初めて学会に参加し、患者とその家族、治療サイドの悩みも具体的に知りました。指圧でクリアできる問題も結構あることを知ったのです。今後は、それを見据えてチャレンジして行こうと考えています。(インターネット・ブログ上でも細かく報告しています。興味を持たれた方は、検索してください)
~~ プログラム抄録集で紹介されている内容は以下の通りです。~~
「洗腸6年のあと、排便の自立を得た一例」
むらおかようこ やのたつひこ はせがわさとし ふじわらかずえ たかはしながひさ (1)基本指圧研究会 指圧師 [目的]開放性二分脊椎患者における膀胱直腸障害は重度のものが多く、対処の選択肢も多くなってきたが、日常管理に困難も伴うのが現実である。医療行為に当らない働きかけも、症例によっては、歩行の改善とともに自立排便を獲得できることを示したい。 [対象]1994年、35週出産の男児。腰椎3のレベルの開放性二分脊椎を某大学病院で、生後7日目に手術、水頭症は2ヶ月目にVPシャントを施行。軽度の知的障害を有する。2歳以後は東北大学・拓桃医療センターでの治療を希望し、両側水腎症と膀胱尿管逆流症に、3歳時に膀胱拡大術と膀胱尿管新吻合術施行し、以後の日中は間歇導尿、夜間は持続導尿であった。排便は拓桃医療センターの1年間リハ入所後、小学2年から中学1年まで週2回の洗腸で管理してきた。下肢は痙性、膝の可動制限あり。3歳半から歩き出したが、尖足歩行。体幹の揺れが激しい不安定歩行を見かけた指圧師が、歩行改善を目的に関わり出した。 [方法]2007年9月から翌年7月までの10ヶ月間に、3種のプログラムを導入した。 [結果]移動能力は、2ヵ月半で膝と足関節の柔軟性が増し、踵を床につけ出した。4ヵ月後には大腿四頭筋の肥大が確認でき、重心も安定し、立位や歩行姿勢の改善が認められた。3ヶ月過ぎから洗腸の回数や使用水量を減らし、腸内容を少量残存させだしたところ、その1ヵ月後に、硬便1個が出た後、10個摘便できた。その後は自力排便が可能となり、長い便も出せ、洗腸は不要となった。 [結論]神経因性直腸による便秘を、指圧と運動の関わりで自立排便を得た一例があった。 |
以上がプログラム抄録集に報告された内容です。
むやみに強い力で圧すのではなく基本の「圧し方」をしっかり学び施すことで前代未聞の治療効果が生まれたのです。医学界でも認められるところとなりました。ご報告いたします。
学会の抄録集