近況報告
メキシコ指圧記(2年目を振り返って)
メキシコののんびりと流れる時間の中でも、毎日が施術と仕事の仕込みの連続で2年目もあっという間に過ぎ去りました。昨年8月には指圧普及を目的とした「Namikoshi Shiatsu Mexico A.C.(浪越指圧メキシコ協会)」を発足し、何とか軌道に乗せることができ、2年目の目標達成度も自己採点では合格点で終わりました。
豚インフルエンザその後
と、順調にことは運んでいましたが、今年4月のメキシコ発新型インフルエンザの影響で一時は仕事がゼロになり、予定表が全くの白紙になった時にはさすがに顔も青くなりました。現在は流行以前の状態にもどりましたが、依然ホテル業界等は閑古鳥が鳴く状況で、それに付随する指圧を含めたマッサージ業界は非常につらい状況にあります。これも捕らえようによっては、メキシコの指圧が癒しから脱却する機会になるかもしれません。なぜなら、以前から気持ちいいだけのマッサージというものに世間が飽きてきた状況で、「気持ちいい+α」が求められていました。さらにこの不況でその要求が高まり、そのプラスαが指圧においては「改善」であることをアピールして、この状況を打破していこうとプラス思考で取り組んでいるところです。
TERAPIA SHATSU
常日頃、「治す」ことに焦点を合わせ、気持ちいいだけの指圧より「改善効果のある指圧」を心がけ、去年ぐらいから「TERAPIA SHATSU(指圧療法)」と言うようにしています。これらは、自分の指圧に更なる価値と責任を持たすから施術も真剣になり、癒しを求めるお客さんよりは、痛みを患った患者さんの来る比率が多く、勉強の毎日で、その甲斐もあり、患者さんの指圧への期待度もあがり、何かあるたびに「秀男に診てもらえ」といってくれるようになりました。それなりの成果も出てくるとついつい調子に乗りそうな状況なのですが、「天狗にならず、明らかに手に負えない場合は断る」を肝に銘じ、地元では「ヒデオ ムイ オネスト(正直者の秀男)」と言われています。
指圧の普及活動
普及活動は、全然上達しないスペイン語ですが、講演依頼などがあれば積極的に人前に立ち、大陸をあちらこちらと走り回り、指圧の素晴らしさを唱えています。2008年9月には約800名の観衆を相手に2時間の「指圧と美容について」を講演しました。化粧品会社によるマッサージシンポジウムへの招待で、思惑は他のマッサージと同様に製品と技術のコラボレーションでしたが、私には指圧の基本をまずは伝えたいという信念があったので、「指圧は衣服の上から行うものを基本」などからも、新製品のマッサージオイルも使わなければ、シワ取りクリームも絡めず、淡々と指圧のすばらしさのみに特化して講習をし続けた結果、観衆には大絶賛でしたが主催者側には不評で、今年のシンポジウムには見事にお誘いがありませんでした。
失敗も多々ありますが、毎回の講演では指圧にとても関心をもってもらえ、必ず講演後には観衆を直接私が指圧する時間を設けて、指圧の素晴らしさを体で感じてもらっています。別に私の指圧が一級品ということではありません。母校で学んだ技術が、世界に通用する技術であるということに尽きます。そして、このような触れあいを通して行く中で、本当の指圧を学びたいという声が増えてきたことから、Namikoshi Shiatsu Mexico A.C.にて悲願の指圧初級講座51時間コースを開始し、ついに指圧の正統な同志作りの機会を獲得しました。学習目的は圧点の精度とか手順を覚えるというものではなく、まずは「手指で体の状況を感じることの大切さを知る」、「圧のおいしさを味わう」こと等の「感覚を養うこと」に重点を置いています。これは、他のマッサージ学校では手順を淡々と教えるだけ終始するのとは異なり、私自身が授業や練習会等を通して感じた「指圧の良さ」にまずは目覚めてもらいたいと思い、毎回の講習で自ら生徒たちと押し合い直伝を基本としていますので好評なのですが、講習の後はフラフラな時もあります。私には体でしか指圧を教える手段がないのですから指圧の未来を夢見て耐える日々ですが、講座も最終回に近づくにつれ上達してくると、懐かしい学校で習った圧を少し感じることができ、なんともうれしくなります。また、講座の中で筋肉や骨などの豆テストを行ったりと、私の学生時代とダブらせて懐かしみながら、生徒の悲鳴を聞くのもかなりの快感だったりします。
3年目は、現状況をさらに熟成させ、メキシコにたくさんの同士を増やし、次なるステップに向けて日々精進し、メキシコに少しでも多くの母心を伝えようと思います。