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行事のご報告

「指圧師の臨床に生かす、呼吸器リハビリテーションの基礎と実際」 平成29年度通常総会記念講演 一條幹史先生

2018/3/24

「指圧師の臨床に生かす、呼吸器リハビリテーションの基礎と実際」 平成29年度通常総会記念講演 一條幹史先生

日 時      平成29年6月11日(日)
会 場 ホテルメトロポリタンエドモンド 3階

○司会 それでは、3時になりましたので、これより記念講演を行います。
本日は、湘南鎌倉総合病院リハビリテーション科、呼吸療法部主任、理学療法士、歯学博士でございます、一條幹史先生に、「指圧師の臨床に生かす、呼吸器リハビリテーションの基礎と実際」と題しまして、記念講演を行っていただきます。

それでは一條先生、お願いいたします。

○一條先生 ご紹介ありがとうございました。私は一條と申しまして、湘南鎌倉総合病院から参りました。今回は、「指圧師の臨床に生かす、呼吸器リハビリテーションの基礎と実際」ということで発表させていただきます。人生の諸先輩の前で講義するのが非常に緊張していますけれども、いつもどおり元気に発表してきたいと思いますので、失礼なことがありましたら若げの至りだと思って許してください。よろしくお願いします。(拍手)

それでは参ります。まずアイスブレイクということで、自己紹介から入っていきたいと思います。

名前は一條幹史と申します。先ほども申し上げましたが、湘南鎌倉総合病院のリハビリテーション科、呼吸療法部というところで働いています。
湘南鎌倉総合病院、ご存じの方がいらっしゃるかもしれませんが、藤沢市と鎌倉市の間にある病院でして、病床数が650床で、いわゆる急性期病院と言われていまして、そこの中でも超がつくほど急性期ということで、在院日数、入院してから退院まで、平均で約10日という、非常に慌ただしい病院で働いています。

職名が理学療法士なのですけれども、呼吸療法部というところに所属していまして、専門を呼吸でやっています。なので、院内では呼吸療法士という名前で仕事をしています。

呼吸が専門なのですが、そこの中でも、集中治療領域の理学療法、それからICU、そこでのリハビリテーションを実施しています。ちょっと首を横に見ていただきたいのですが、何をやっているかというと、私、人工呼吸器が中でも専門でして、人工呼吸器装着の患者さんのリハビリですね。今、最近はそういうのがすごくはやっていまして、人工呼吸器のついた状態からリハビリをしたほうが、患者さんの予後が良いということが言われていまして、人工呼吸器をつけたまま歩く練習をしています。こういう形で、入院してすぐにリハビリをすることで患者さんをよくするということに努めております。

私の略歴なのですけれども、リハビリの学校を卒業して、もう少し勉強したいなと思いまして、神奈川歯科大学の大学院へ入学しました。何で歯学博士なのかというと、解剖をやりたくて、そこでご紹介をしてもらったのが神奈川歯科大学というところです。そこでCTとご検体を用いた三次元の画像解剖学というのを勉強させてもらいました。こちらに写っているのが、私の研究テーマの、舌骨と下顎骨の形態の関係ですね、そういう形で勉強していました。

そこで、指圧学校の高橋先生と出会いまして、高橋先生も学生として、研究していたのですけれども、非常につらい日々を一緒に過ごしました。そこで意気投合しまして、今日こういう形でお話しできるようになりました。高橋先生、ありがとうございます。

ちょっと話がずれるのですけれども、私の活動を聞いていただきたいのですが、実は呼吸以外でも活動していまして、体表解剖学研究会というところの講師をしています。どういうものかというと、解剖の主に運動器なのですけれども、ご検体から得られた三次元の解剖の知識を、体表面上から、いわゆる触察ですけれども、触察で表現していくというところの研究を行っています。その流れで、東京都市療法研究会というところで、その筋肉に対して機械的刺激を与えて、治療する研究を行っています。そこで、こういう形で治療法を研究しているのですけれども、この方が、僕の師匠というか、いつも教わっている方なのですが、実は、指圧学校の卒業生だったということを知りまして、非常に身近だなと思って出しました。青野治療院を開かれている青野先生です。

というわけで、非常に高橋先生と青野先生は、私の中では非常に身近に感じながら講演ができるかなと思いますので、よろしくお願いします。

では早速本題に入りたいと思いますが、今日は、呼吸リハビリテーションということで、臨床に生かせるような呼吸リハビリテーションの講義ということだったので、このようなラインナップにしました。

まず基礎という形で、基本的な方針ですね、呼吸リハビリの方針を共有しまして、その後に、実際という形でプログラムの組み立て方とか流れをご紹介したいと思います。最後に現状と課題というところをお伝えしたいと思っています。

それでは行きます。呼吸リハビリテーションの基礎という形になります。そもそも、クエスチョンとして、呼吸リハビリとは何かということになります。これはちょっと世界的な背景を見ていただきたいのですが、慢性閉塞性肺疾患、代表的な呼吸器疾患ですが、これはWHOによると、これからどんどん増えていくと言われています。2020年には死亡原因の第3位になるだろうと言われています。そして、我が国に関して言うと高齢化という形になっていますので、これは、呼吸の疾患がなくても、加齢によって呼吸機能というのは年々弱くなっていくということがわかっています。ということで、その全体的にも増えてきて、そして加齢によっても増えていくということで、患者さんの数自体が増えていく。そうすると呼吸リハビリの対象者も増えていくというところで、注目されています。高橋先生からも聞いたのですが、あん摩マッサージ指圧師の対象の疾患として増えてきているというところの背景を考えると、やっぱりこういう流れが出てきているのかなというふうに感じます。

呼吸器機能障害者をちょっとひも解いていきますと、これは定義ですけれども、肺疾患によって肺呼吸が不十分で、肺胞内のガス交換が妨げられるなどと言われています。正常な呼吸では、外気を吸って、そして肺に取り込んで、酸素と二酸化炭素と交換して、そしてまた息を吐いて、その二酸化炭素を出すというふうになっていますが、肺機能障害というのは、肺に取り込む、いわゆる吸ったり吐いたり、換気というものと、あとは酸素と二酸化炭素の入れかえ、ガス交換というのが悪くなるのです。

これが、何が悪いのか、何で悪いのかというと、主な原因が、労作時の息切れ、呼吸困難ですね。息切れがやっぱり一番悪いのですね。
これがなぜ悪いかというと、負の循環というのを起こすと言われています。それはどういうことかというと、右の図を見ていただくとわかると思うのですが、息切れが起こると苦しいから動かなくなる、動かなくなると廃用を起こす。廃用を起こすと、さらに運動機能が低下する。運動機能が低下するとさらに苦しくなる。このような負の循環、スパイラルというのが起こると言われています。これが日常生活活動の低下、苦しいからあれができない、これができないという形になってくるということで、これをどうにかしなきゃいけないというふうになります。

というわけで、この呼吸リハビリテーションが重要と言われていて、定義を話しますと、呼吸器の病気によって生じた障害を持つ患者に対して、可能な限り機能を回復あるいは維持させ、これにより患者自身が自立できることを継続的に支援していくための医療と、日本呼吸器管理学会及び日本呼吸器学会で言っています。要約すると、呼吸機能障害から起こる生活機能の低下を防ぐというのが主の目的になります。

実際、呼吸リハビリの効果というのは、今までの先行研究から判明している、わかっているものが、大きく五つあります。一つは、呼吸困難感、息切れが軽減すること。あとは運動体応能、これは運動体応能というのは、どのくらいまで運動を耐えられるかの限界ですね、一言でいうと体力ですね、の改善。あとはQOLですね、生活の質の改善。あとは、入院回数と入院日数の減少。そして不安・抑うつの軽減というふうになります。

このようなことをまとめると、呼吸リハビリの目的というのは、呼吸機能障害から起こる悪循環を打開するということですね。先ほど申し上げた息切れ、負活動、廃用、運動能低下のスパイラルを断ち切るということになります。それは呼吸リハビリの息切れの軽減と、運動対応能向上という効果を使っているということになります。結果的に、それによって日常生活活動を活性化していく、患者さんが自分らしくという、QOLが上がっていくというところで、やはりこのスパイラルを切りたいというところが目的になっています。

ここでよく、以上のことから、呼吸のリハビリというところの勘違いというのを訂正したいというかなんですが、呼吸リハビリというと、肺をよくするとよく言われているのですが、実はそうではなくて、呼吸リハビリというのは、呼吸障害者から起こる息切れとか、いわゆる体力の低下、それをコントロールするんだというところが大事だと、そういうことになっています。

その次へ進もうとして、呼吸リハビリに必要な考え方というふうになります。前提として何が大事かと言われると、呼吸リハビリの実施要件、重要事項として、大きな方針として、呼吸リハビリテーションに関するステートメントということで、日本呼吸器管理学会及び日本呼吸器学会から、この三つの要件を呼吸リハビリをするときは満たしなさいというところが言われています。一つは継続的、そして包括的、そしてチーム医療というのがキーワードになっています。

一つ一つ説明していきますが、基本的な要件、継続的というのは、患者よりその数に継続して行いましょう、そのとおりなのですけれども、あとは多様な医療サービスを継続的に、色々なサービスをやっていきましょうということになります。これはなぜかというと、研究で、呼吸リハをすると、6から12週でよくなってくると。ただし放っておくと12から18カ月かけてさらにもとに戻ってしまうというのが背景にありますので、やっぱり継続性というのが重要と言われています。

次に、基本要件、包括的なのですが、実は呼吸リハビリというと運動することが表に出ていると思うのですが、実は呼吸リハビリテーションというのは、この出ているもの全てのことを言うのですね。一言でいえば、呼吸にいいことは全てやって、全体的にアプローチしましょうということなのですけれども、この生活機能改善、薬物療法、栄養療法、酸素療法、肺理学療法、運動療法、社交活動、こういう形で、トータルでやっていきましょうというふうになります。なので、やっぱり多職種、いろんな方と力を合わせて実施していくというのが重要となります。

さらにチームということですね。これはその名のとおり、チーム医療で行ってください。地域において医療連携を図りながら行いましょうということになります。これは患者さんを取り巻くチームで連携してくださいということになりますし、あとは、例えば病院であったら、病院から患者さんが退院して地域に出たと、そういったときには、各地域の連携もきちんとしなさいということが言われています。

以上から、それを求められているものと考えてみると、継続的、包括的、チーム、こういうものを満たすのは、なかなか一人ではその治療が困難だということがわかります。そう考えると、やっぱり多職種協働と、そんな形ですね、考え方が重要と思います。異なる職種がきちんと連携して対応していくと、患者さん中心の医療というふうになります。

やっぱりその多職種協働を実現するのは、共通認識を持つということが重要だと思います。今回私が理学療法士としての立場でお話しさせてもらっているのも、多職種協働の一つかと思うのですが、この後具体的な運動療法とかそういうのをご説明するのですけれども、臨床で生かすというふうに考えると、明日からの機能訓練に生かしてもらってもいいですし、さらにステップアップして、チーム医療ですね、患者さんを取り巻く多職種の共通認識として扱ってもらうと、非常に私はうれしく感じています。

ということで、まずは基礎の呼吸のリハビリのまとめですけれども、呼吸機能障害の主訴は息切れで、それに伴う負の循環が問題だというふうになります。呼吸リハビリは負の循環を打開して、日常生活活動の活性化を図るところだとお伝えしました。呼吸リハの基本要件は、継続的、包括的にチームで行うことであると。多職種協働が必須であり、呼吸リハビリに対して共通認識が必要だというふうになります。

では早速呼吸リハビリの実際ということで、詳細に移っていきたいと思います。
先ほども申し上げましたが、呼吸リハビリというと、包括的なことを示すのですね。なので、今回はその中の一つの、上から2番目の運動療法、私がよく指導する運動療法について説明をさせていただきます。
運動療法の実際の前に、運動療法の整理ですね。ワッサーマンの歯車という考え方を頭に置くと非常にわかりやすい、おもしろいというのがあります。これは、運動に必要な要素、これを突き詰めると、肺、心臓、骨格筋、この三つになると思います。この三つが三位一体で歯車のようにかかわっていると。そういう考え方になります。なので、人が歩くと酸素を取り込んで、肺が酸素を取り込んで心臓で運んで筋肉に渡すと。筋肉が使ったことによって生じる二酸化炭素をまた心臓から送って肺に行って出すというようなことですね。これが歯車のように動いているというような考え方になります。

この考え方をもとに、先ほど言った肺の病気をした患者さんを考えると、こう、歩いている患者さんが病気になると。肺の病気になると、肺の機能が小さくなりますよね。そうすると、うまく回らなく、途中で止まっちゃったりします。そうすると動かなくなるので、筋肉が落ちます。そうするとさらに心臓も落ちてくる。全ての歯車が小さくなってくると。そういうふうになってくると、先ほど申し上げた負のスパイラルに入るのです。これを断ち切りたいので頑張って歩いて動いてもらうというふうになると、骨格筋が少し大きくなる、ないしは維持をして、この歯車をきちんと回せるようにするというような形になります。

これをもとに運動療法の進め方をどういうふうにしていくかということになりますが、運動療法、実はガイドラインがしっかりあります。特に呼吸リハビリに関しては、リハ業界の中ではもう研究が非常に進んでいる分野なのですね。非常に体系化されています。今日お話しする内容も、日本呼吸器管理学会とか、日本呼吸器ケアリハビリテーション学会から出されているこのマニュアルに沿ってお伝えしています。なので、ちょっと興味を持ってもう少し勉強を進めていきたいと思ったときには、これを見ていただくとお勧めの本になります。

呼吸リハビリテーションのプロセスに移ります。まず、患者の選択、適応を評価して、その後、患者さんを個別に評価します。そして実際にプログラムに乗せるのですけれども、プログラムを実施して、その後再評価、そして維持をすると。そしてこれを繰り返すというのが基本的なプロセス、流れになっています。これを一つ一つ説明していきます。

患者さんの選択、運動療法の適応でございますが、どのような患者さんが適応かというふうになると、患者さんの選択の基準、運動療法の適応なのですけれども、これは我々がその適応を判断するということはないと思うのですが、これをよく見ていくと、呼吸器疾患があって、あと標準的な治療がされて、それに制限があれば適応になるのですね。だからほとんどの呼吸器疾患は、運動療法の適応になります。先ほど背景で申し上げたのですが、患者さん自体が増えているというので、ほとんど適応になるということなので、やはり我々としては扱う患者さんが増えているということになります。

では、運動療法をしてはいけない人はどういう人かというと、非常にたくさん文字があって申しわけないのですが、そんなに覚える必要もないのですが、やはり大事なのが、大事な考え方としては、先ほどのワッサーマンの歯車なのですね。肺、心臓、骨格筋というふうに考えると、肺が弱っている人に対して骨格筋、筋肉を動かして治療するわけですから、重要なのはやはり心臓なのですね。肺が弱い人に対して、心臓も弱ければ、なかなか歯車は回らないというところで、臨床的にはやはり循環動態といって、心臓ですね、が悪い患者さんに関しては、非常に重要視というか、注意してやらなくてはいけない対象になるというところです。

実際患者さんが選択されたら、評価を行います。患者の何を評価するのかというふうになりますけれども、これもステートメントで言われているのが、開始前の評価、必須項目、行うことが望ましい評価、可能であれば行う評価と三つに分かれているのですね。書いてあると非常に内容がスパイロメトリーとか心電図とかエックス線とか、非常に病院に偏った内容になって、訪問とか在宅においてなかなか指標になるものがないかなというふうに思います。なので、今回紹介するのが、それを抜粋して皆さんにご紹介したいと思うのですけど、その抜粋する内容としては、呼吸リハビリの効果からちょっと逆算して抜粋したいなと思います。

呼吸リハビリの効果、先ほどもお伝えしたのが、呼吸困難感、息切れの軽減と、あと運動体応能の改善、体力が改善するというところで、この二つをきちんと評価できるものをお見せしたいと思います。なので、今回紹介するのが、問診及び身体所見、あとは呼吸困難感、あとは時間内歩行テスト、私が臨床でもよく診ているところをご紹介したいと思います。

必須の項目として問診なのですが、どういうふうに問診するかというと、重要なのはこのMRC息切れスケールというのがあります。これはグレードがゼロを息切れを感じない、グレード5を息切れがひどくて外出できない、または衣服の着脱に息切れがするということで、6段階になっています。これを評価することで、患者さんの層別化というのがわかるのですね。軽症、中等度症、重症という形で分けることができると。この全体図を見ることができるというところで、これは問診でよく使っています。

続いて、呼吸困難感、これをどうやって評価するかというふうになるのですが、これはヴォルフスケールというのがあります。これは、この図で書いてあるように、ゼロを、感じない、そういう症状を感じない、10をもう強くて我慢できないというような形の尺度として、ゼロから段階的に強くなるというのを質問していくという評価になります。これは、先ほどは全体なのですけれども、この評価を使って各々の動作ですね、こういう動作、息が苦しい、十段階でどのくらいですかというのを聞けるというようなところで適応があります。なので、どの動作がどの時にどのぐらい息が切れるのかというところを見ていくということになります。

次ですけれども、6分間歩行テストというのがあります。これは息切れの軽減の後にあった運動体応能、体力の評価ということになります。これは、6分間で歩ける歩行距離を測定するということになります。患者さんに6分間でできるだけ頑張って歩いてくださいというところまで歩いてもらって、どのぐらいの距離を歩けたか、それを記録していくという形になります。このデータがいろいろ研究されていまして、入院率に関する、再入院の確率が、歩けないと高くなってしまうとか、そういうことも分かるのでこれを使っています。これ自体もアメリカの胸部外科学会からガイドラインをきちんとこういう形でこういう条件でこういうふうにしましょうというのが出ていまして、そのとおりにやると信憑性の高い評価になると言われています。ここまでやって、実際、プログラムの作成と実践という形になります。

ここはやはり本題なのですけれども、種類、運動するといっても種類は、やはり運動の考え方をどういうふうにしていけばいいのですかというところなのですけど、運動療法のプログラムの種類は大きく三つに分かれていると言われています。運動そのとおり運動療法、あとコンディショニング、これは準備とか調整の運動ですね。あとはADLトレーニングと、この三つになります。

運動療法は、もう書いてあるとおりトレーニングですよね。やはり筋肉を鍛える、動かすというところ。コンディショニングは、リラクゼーションとか、胸部可動域改善、スレッチとかですね、体を調整する運動。あとは、実際のADLトレーニングと、実際の生活を用いて練習をしてもらうと、この三つをうまく組み立てていくということになります。

運動療法も、エビデンス、いわゆる科学的証拠というのはもう出ているのですね。どういう運動をすればいいかとか、そういうのがわかっていると。これはACCPですね、アメリカのほうの学会から出されているのですけれども、何がいいかというと、下肢のトレーニングなのですね。足のトレーニングがエビデンスとしてはAで、物凄く高いというふうになります。呼吸のリハビリと言っているのですけど、足を鍛えるといいというのがわかっていると。たくさんの論文を見てみると、これが一番結果が出ているというふうになります。

呼吸リハビリというと、呼吸の吸ったり吐いたりの練習だというイメージがあるかもしれないんですけど、呼吸機能リハビリは実はBで、それほど推奨されていないというか、これは組み合わせて使いましょうという形になります。なので、大きく捉えると、下肢のトレーニングをしながら呼吸の吸ったり吐いたりの練習を組み合わせてやりましょうというふうに、あと上肢の練習も少し入れるといいですよというふうになっています。

プログラムの考え方なのですが、まずは開始時に推奨されるプログラムの構成というのがあります。この図は、縦軸が機能障害の軽症、中等度、重症の順番に流れていて、右の横軸が、先程のコンディショニング、ADL練習、あとはトレーニングですね、その割合を示しています。

どういうふうに見るかということですね。軽症の患者さんであれば、このような形で、コンディショニング、いわゆる調整運動は少な目にして、トレーニングをたくさんやりましょうと。息切れが少ない患者さんですので、こういう形でしっかり体を動かしましょうと言います。

中等度症の単一のプログラムの考え方は、軽症でも少なくトレーニングをして、コンディショニングですね。ストレッチとか、まず、体を動かすことからやっていきましょうということになります。

では、重症の患者さんはどうするかというと、コンディショニング、やはり体をまず、もう息切れが強くて動けない患者さんが多いですから、まずは、少し体を動かす機会を増やすみたいな形で、コンディショニングからスタートして、少し運動療法を加えるというような考えになります。

それで、これは、プログラムの考えだと長期的な考え方なのですけれども、今のように開始時は、層別化して、割合を決めるのですが、結局はどうしたいかというと、やはりトレーニングに移行したいというふうに思います。やはり筋肉をきっちり動かして、呼吸機能を維持していくというふうになるので、持久力トレーニング、筋力トレーニングが主体で、運動習慣がライフスタイルに組み込んで、身体活動量を高めるというのが、大切と言われています。

それで、実際、運動などの処方という形になるのですが、どういうふうに運動してもらうかということが、とても重要と言われています。FITTと言われていまして、フレークエンシー、頻度、インテンシティー、強度、タイム、持続時間、タイプ、種類。この頭文字をとって、FITTと言われていて、これをきちんと運動を処方しましょうというふうになっています。

呼吸の業界は、お医者さんも非常に注目が高いので、運動を投薬として考えているのですね。なので、このぐらいの頻度、用法、用量というのをきちんとやりなさいというところが言われています。

それで、一個一個説明すると、頻度というのは、やはり週3回以上。それで、6から8週、先ほども出ましたが、そのぐらい続けないと効果が出づらいのということが言われています。それで、インテンシティー、強度となりますが、これは、心拍数と自覚症状、これを見ながら、強度を決めていくこととなります。あと、タイム。持続時間。これは、20分以上が目標というふうに言われています。それで、タイプ、種類は、下肢及び上肢。または、体幹のところをやりましょうというふうになります。それで、運動強度の設定の指標なのですが、先ほど紹介したその修正ボルグスケールですね。息切れをどの層をどうする、どのぐらい感じるか。それを目安に処方するというふうになります。それで、4から5ですね。多少強い。少し息切れを感じてもらうぐらいの処方をできる運動を続けてもらうというのが、目標になります。
あと、心拍数ですね。心拍数は、ハート・レート・マックス法と言って、予測の脈拍の最上限ですね。そうしたら、何割ぐらいで運動してもらうかというのを決めるのですね。220引く年齢かける運動競技と言われているので、私が、今、35歳なので、それで計算して、5割とかになると、大体1分間で90ぐらいの運動を処方するというのが、肝心になります。

それで、運動強度の違いなのですが、高い負荷で運動するのと、低い負荷で運動するのは、どっちがいいかというような形なのですが、これは、やっぱり高い運動をしたほうがいいのですね。つらい運動をしたほうが、やっぱり効果が出ると。お薬とかと同じですね。やっぱり強い薬を飲めば、それだけ症状がよくなると。

ただし、副作用もあります。これは、患者さんがこのアドヒアランスと言うのですけど、患者さんが疲れて、言うことをきかなくなっちゃうというか、ドロップアウトしてしまうんですね。脱落しちゃうんですね。だから、それとは逆で、軽負荷でやると継続しやすいという利点、あとは、その患者さんに協力してもらいやすいという利点はあるのですけど、やっぱり運動量が少ない状態で始めるので、改善が少ないですね。それもデメリットとしてあると。

これは、まあ、どっちがいい、どっちが悪いというわけではなくて、うまく使い分けですね。患者さんの治療をしていく中で、これは、もう少し高強度もできると思ったら、そこから使い分けていくというふうになります。それで、運動療法の種類と方法なのですけども、これは、内容は当たり前で、全身持久力トレーニングは、やっぱり歩くということが重要なのですね。どれだけ歩けたかというところが重要なので、やっぱりその歩行数とか、歩行時間というのが、非常にデータでいいというふうに出ているので、やっぱりここを高めていきたいというふうに思います。歩行が難しい理由を見つけていくというのが、我々の仕事でもありますし、やっぱり歩行を中心に考えるというふうに思います。

それで、四肢体幹筋力トレーニングは、もう本当、当たり前の膝伸展のトレーニングとか、ゴムを使ったトレーニングとか、変わったものではないのですけれども、やっぱり先ほどのFITTというふうに考えると、やっぱりどのくらいの、内容よりも、時間とか、どのぐらいの負荷でやったかというのが、やっぱり呼吸にかかわってくると言われているので、まずは、患者さんがやりやすい運動を見つけてあげると。その見つけてあげるというのが、我々の力量になってくるというふうになります。

それで、運動療法の中止基準になるのですが、基本的には、バイタルサインが基本になります。それで、これも先ほど示したワッサーマンの歯車で言うと、これは出ているものが、例えば、呼吸困難感、呼吸数、あとは、酸素飽和度は、この三つの中のワッサーマンの歯車の三つの肺を見ていますね。それで、心拍数が血圧、これは、心臓を見ています。なので、骨格筋を動かす運動としての要素が三つある中の、肺と心臓をモニタリングしていくというのが、運動法、理数管理するコツという形になります。

以上、お話しした中で、私が考えると、臨床でのポイント、実際、治療の中で何を見ているかというと、それを加味してなのですが、さっき、運動療法、運動療法と、運動したほうがいい、負荷をかけたほうがいいと言うのですけれど、実際、臨床で考えると、そうもいかない人も多いのですね。

それで、そもそも論になっちゃうのですけど、その上の二つなのですが、薬物治療が適切になされてない人がいるんですね。運動しようとしても、実際、お薬をちゃんと投薬されていないとか、ちゃんと吸えてないというところも強化の一つとして入るんですね。

あとは、体重減少がないか確認するというのは、呼吸が弱い人というのは、呼吸をするだけで、ほかの人よりも体力を使っているのですね。呼吸がやっぱり弱っているので、呼吸するのに力が必要になってくるんです。そうすると、ほかの方よりも呼吸するときにエネルギーを使っているのですね。なので、患者さんが何もしなくても、体重がどんどん減っていっちゃうというところで、栄養管理も見ていく必要性もあります。

それで、あと、運動中は、低酸素血症、いわゆる酸欠にさせないというのが重要になります。先ほど示したワッサーマンの歯車で、やっぱり骨格筋は、酸素を使って二酸化炭素を出すわけですね。だから、酸欠な状態で動いたら、やっぱりエネルギー欠乏している状態で無理やり動かしているということになるので、よろしくないので、酸素が在宅酸素療法とか、そういうのをやっている方は、しっかりつけてやってもらうというのが大事です。

やっぱりよく経験するのですけど、酸素を使ったら負けみたいなところもあって、酸素をあえて使わないでやっています、鍛えるためにやっていますという方がいるのですけど、ちょっとそれは、また別個になります。使わないと、やっぱり体は、逆に苦しめているというふうになるので、しっかり酸素を使ってトレーニングするというのが重要です。

それで、あと、実際のトレーニングのコツなのですが、これは、呼気に合わせてトレーニングをするといいよ。力を入れるときには、息を吐いたほうが、実は、いいというふうに言われていますね。それは、吸うときは、交換神経になって、吐くときは副交感神経になるというところで、しっかり吐きながらトレーニングするといいというふうに言われています。

あと、患者さんは、結構息が苦しい人は、息をとめちゃうのですね。そうすると、リズムが崩れるので、余計苦しく感じるというのがあるので、力を入れるときは、息を吐きますよといって、ふっと吐きながら使うトレーニングをしてもらっています。あとは、息切れによるパニックですね。呼吸困難というのは、すごく苦しいのですね、やっぱり酸素にとっては。それがピークに達しちゃうと、もうパニックになっちゃうということがあって、そういう場合は、どうしたらいいかというと、安楽姿位というのがあるのですね。緊急時にとる姿位というのがあって、これは、小さい図で申しわけないのですが、何を示しているかというと、この上肢を固定するというのが重要であります。呼吸したりすると、上肢、手の筋肉が呼吸筋とつながっていますので、手の重みで呼吸がさらに苦しくなっちゃうというのがあります。

なので、息が苦しくてパニックになったら、まずは、手を固定して、それに対して呼吸に対する負荷を減らしてあげるというのがあって、こういうふうに当てると良いと思います。あとは、精神的サポートを忘れないことで、科学的には、トレーニングが重要だと言われているのですけど、やっぱり息が苦しい患者さんたちを苦しくさせますので、これに関しては、やっぱり私達がついているから大丈夫だというところをきちんと見てあげるということが、大事になります。

そして、再評価という形になりますが、再評価をする目的は何かというふうになるのですが、これは、幾つかありますが、やっぱりプログラムの効果判定、これが重要だと思います。先ほど、お伝えした評価などの息切れと、その体力がポイントだよというふうにお伝えしたのですが、これが、きちんとどうなっているかというところを見ていくというのと、あとは、これは、呼吸リハビリだけに言えることではないのですが、実際にもう行っている段階での評価なので、きちんと双方向を評価すると思います。初めは、患者さんの動きとか、状態を評価するだけなのですが、実際、こうしてプログラムをかけて渡しているわけですから、患者さんがどういう反応を示しているかというところもきちんと評価して、自分が出した処方がきちんと合っているか、適正かどうかというところを顧みるというところが重要と思います。

そして、最後、維持になってくるのですけども、これ、維持するポイントはというふうになるのですが、これは、実は、呼吸リハビリの課題というのは、活動的な生活手段の継続を求めることが、ハードルが高いのですね。先ほどもお伝えしたのが、息苦しい方に息苦しいことをするので、ドロップアウト、脱落が多いのですね。もういいですみたいな形が多いので、やっぱりこれを維持することも一生懸命考えなければいけないと。それに、維持する方法を提示できるのが、我々の力量とかになってくるというふうに思います。

それで、このガイドラインに言われている一般的なものが、これが、アメリカスポーツ医学会で出ているものなのですが、ちょっとアメリカらしいというか、ちょっと臨床で使えないなという感じで、強い勧めとか、助け合いとか、バラエティーと楽しさとか、ちょっとアメリカチックな感じがするのですけど、あと、熱意とか、逆に日本で使うと煙たがられるかなというのがあって、ちょっとそれを見て、自分なりに継続するためのポイントとして、私が実際、一生懸命リハビリを続けてもらうために気にしていることを挙げています。

これは、まず承認するというところで、今がだめだということをわかっているのだけど、できないのですね。今をだめだということを否定しちゃうと、もう、じゃあいいよみたいになっちゃうので、今の状態もいいのですけど、もう一歩、何ができるかということを一緒に考えるというのが、続けるポイント。あとは、成功体験ですね。やっぱりできないことをやって、それを獲得してくるリハビリなので、最後は、成功体験。これができたと。今日は、一歩進んだというところをきちんと示すというふうに思います。

それが、その目標の設定の仕方が、次の現状からのスモールステップですね。どうしても、その呼吸困難感とか、体力をよくしたいと、遠くをセラピスト側は見ちゃうので、もっともっと、になっちゃうのですけど、でなくて、それを細分化して、まず何ができればいいのか。それをスモールステップでやっていくというのが、重要と思っています。あと、患者側として受けるのが、ながら運動というのがあって、運動療法をやるといっても、それに集中するのもいいんですけど、やっぱり生活に組み込みづらいんですね。なかなかその生活のスケジュールの中に組み込みづらいというふうになったときに、テレビを見ているときに、この運動をしましょうということで、先ほど、運動療法のところでお示ししましたが、テレビを見ながら足踏みをするというところで、テレビを見ている時間20分は、この運動をしましょうみたいなというところをお伝えすると、なかなか続きやすいと思います。

あとは、その関連として嗜好を取り入れるのですね。患者さんが好きな生活スタイルとか、好きなことプラス運動みたいな形で入れるとうまく続けられると、生活の中に組み込められるというものです。あとは、クールダウンを取り入れる。これは、ほかのセラピストにも言うのですけど、運動をするときに、プログラムを考えるときは、初めにストレッチとかコンディショニングから入っていって、徐々に負荷をかけていくのですね。負荷をかけていって、運動してもらった。それで、はい、お疲れさまでしたという感じになる。一番活動のつらいところで終わっていることが多いのですね。

なので、プログラムとしては、まずは、徐々に上げていって、最高値まで上げた場合、その後、やっぱりクールダウンをしていくのですね。患者さんに、その後に、また、コンディショニングを入れるというところで、運動の振り返りとか、あとは、心地よい状態で運動療法が終わったというところに持っていくと、もう一回やりたいなと思っていくので、こういうクールダウンを入れるというのが、プログラムの中でも、工夫ができるところだと思います。あとは、データの掲示ですね。先ほど、科学的、科学的とさんざん言っていますけども、やっぱり自分が実際何をやって、患者さんが何を協力してもらって、何がよくなったのか。そういうのを振り返る。そういうのは、非常に患者さんにも励みになりますから、入れてもらうといいかなというふうに考えています。

それで、呼吸療法の実際のまとめになります。運動療法のエビデンスで高いのは、トレーニングで、部位は、下肢です。運動療法の評価には、呼吸困難感と運動対応の評価は、必須と言われています。運動療法のプログラムは、下肢に対しては、構成が、重症度から、さっきのMRCスケールというのを扱って、患者さんは、どの程度息が切れているのか、からスタートしていくというふうになります。長期的には、やっぱり体を動かすというところにつなげていくことが重要という内容になります。

それで、実際に運動してもらうためには、その内容とかも重要なのですが、FITTですね。どのぐらいの頻度でどのぐらいの強さでどのぐらいの時間をやるのかというのが、基本的な考え方、それを明らかにするというのが、基本的な考え方と言われます。それで、運動療法の継続においても十分配慮。ここが重要ですね。継続をしてもらうためにはという、その継続性を考えて、1回1回よりも、長期的なものがきちんとセラピスは見えているというところが、成功のコツというふうに思います。

それで、呼吸リハビリテーションの現状と課題になります。呼吸リハビリは、非常に研究が進んできて、いろいろ新しいこともわかってきています。呼吸困難感というのは、実は、生命予後に影響するというふうになります。この論文は、見て左が、呼吸の障害の程度。ですから、呼吸の病気の程度ですね。病気の程度で、生命予後を見た図になります。これに関すると、その病気の程度と生命予後は、優位なほう、関連性がなかったというところ。右は、呼吸困難感を分類して、それと生命予後を見たというところで、その後、優位に関連があるのですね。やっぱり呼吸困難感が強いと死亡率が高いというのがわかってきました。というふうになります。

あとは、運動能力は、生命予後に関連するということで、これもブイドットオーツーと言ったのですけれども、どのぐらい体力があったか。その体力によって死亡率が変わってくるというところもわかってきた。やっぱり体力のある人のほうが、いわゆる歩ける人に関して言うと、死亡率が少ないというのがわかってきているというふうになります。

ただ、現状なのですけども、これは、コーズという報告によると、呼吸リハビリは、いいよ、いいよと押していますが、実は、経験している人が、重症の呼吸障害で、もう半分以下なのですね。呼吸障害がある人の半分以下しかリハビリを受けていないということが、報告でもうわかっています。なので、呼吸リハビリの普及は、いまだ不十分なのですね。

それで、これから何が言いたいかというと、実際、先生方のニードも高まってきているという現実がある中で、我々の職種としては、まだ、広がっていないというところで、ギャップが生じているのですよね。

なので、やっぱりそう考えると、もっと多大な職種を、興味をもって、もちろん呼吸リハビリに関して専門でやっている我々は、見たいという気持ちもありますが、そういうことが表沙汰になっていないというところもあると、先生方から紹介してもらうということもありかと思うのですね。

その逆もあって、先ほどお伝えした、高橋先生とか、あと、青野先生とかと相談すると、先生方の治療に相談したいなということもあるのですね。そう考えると、やっぱり患者さんのことを考えると、もっとお互い職種について興味をもって、専門性を理解して連携していくのですね。照会し合うみたいな形がつくれると、より患者さん中心の医療になるのかなというふうに感じます。専門性の発揮とスムーズな連携が、やっぱり患者さんを救うのかなというふうに思っております。というわけで、以上になりますが、今回の発表が、連携の一助となれば幸いです。

ありがとうございました。
(拍手)
○司会 一條先生、本日はありがとうございました。

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